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平成11年度 戦略的基礎研究推進事業 「研究年報」
Vol. 1 (2000) 753
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「ゲノムの構造と機能」平成10年度採択研究代表者
「大腸菌におけるゲノム機能の体系的解析」

森 浩禎1)
1) 奈良先端科学技術大学院大学遺伝子教育研究センター 教授
Abstract:  研究のねらい:ヒトゲノムの決定終了が間近に迫っている現在においても、機能未知遺伝子群の機能解明、遺伝子ネットワーク解明、病原性および有用微生物の有効利用等において大腸菌研究の重要性は明らかである。このような現状を踏まえ、ゲノム生物学からの大腸菌研究を推進することで一生物としての大腸菌の完全理解を目標とし、今後のゲノム生物学の基礎を築こうというものである。これまでの研究の概要:そのためには、1)大腸菌ゲノム配列解析より明らかになった情報の解析および整理とデータベース化、2)機能未知遺伝子群の網羅的な機能解析のための研究材料の構築、3)この材料を用いた網羅的機能解析と情報科学的解析との連携、を目標とした研究開発を行った。成果:上記研究開発の結果、以下の成果を得ている。1)ゲノム配列解析方法の改良と自動化、今後の網羅的機能解析の結果を広く公開するためのホームページの開設とそのためのシステム開発の完了。2)研究材料の作製はa)全予測遺伝子のクローン化の完成とそれを利用したDNAチップの完成、b)全遺伝子の網羅的破壊株作製方法の完成。この方法を用いた破壊株作製は全遺伝子のほぼ1/3を終了。c)これまで必須遺伝子と考えられてきた領域以外の約150箇所の欠失株作製から半数の領域に新規必須遺伝子の存在が示唆され、残る半数の欠失の完了、d)質量分析計を利用したRHFRタンパク質二次元電気泳動法によるgene-protein indexを140スポットについて終了。3)実験系と情報系との連携において、a)DNAマイクロアレーからの情報を元に遺伝子ネットワーク解明のためのソフト開発、b)コドン利用頻度を利用した遺伝子産物の分類、c)質量分析計からのデータ解析システムの開発、を行った。今後の見通し:全遺伝子のクローン化の完成により、そのクローンを利用した新たな解析システムの構築が可能となった。現在、細胞分裂等に関する変異(広田コレクション)同定の系の確立を進めている。DNAマイクロアレーの完成により、網羅的な転写解析が可能となり、今後はクラスター解析の結果を利用しながら転写因子等による発現調節の全体像の解明が短期間に可能と考えられる。破壊株、欠失株を利用し、遺伝子ネットワーク解明へ向けた解析を進める予定である。破壊株は2000年中の完成を予定しており、網羅的な機能解析の材料とする。同時に広く公開を行い、機能未知遺伝子の機能解析を加速させていきたい。

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