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平成11年度 戦略的基礎研究推進事業 「研究年報」
Vol. 1 (2000) 745
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「ゲノムの構造と機能」平成10年度採択研究代表者
「アポトーシスにおけるゲノム構造変化の分子機構」

長田 重一1)
1) 大阪大学大学院医学系研究科 教授
Abstract:  アポトーシスは生理的な細胞死の過程であり、この過程では、カスパーゼと呼ばれる一群のプロテアーゼが活性化され種々の細胞内分子を切断する。この最終段階で、カスパーゼは特異的なDNase(CAD)の阻害分子(ICAD)を切断することによりCADを活性化し色体DNAを切断する。本研究は、CADの活性化機構、反応機構、および、アポトーシスにおける染色体DNA切断の生理作用を解析をすることを目的とした。その結果、本年度はICADはCADの阻害作用ばかりでなくCADの合成時にシャペロンとして作用すること、その際、CAD,ICADのN- 末端に共通に存在するドメイン(CADドメイン)が必須であることを示し、その構造をNMRを用いて決定した。また、カスパーゼにより切断されないICADを発現するトランスジェニックマウスを作成したところ、このマウスから調製した胸腺細胞は、ex vivoでは種々のアポトーシス刺激により、DNAの断片化が起らないのに対し、in vivoではDNAの切断が起こっていることが判明した。このことを詳細に解析した結果,アポトーシスを起こした細胞がphagocytes により貪食された後、そのリソゾームに存在する酸性DNaseにより標的細胞の染色体DNAが切断されることが示された。一方、ショウジョハエの細胞株よりCADを精製し、そのcDNAを単離した。これらは、ほ乳動物の遺伝子と比べ、17-20%の相同性を示した。

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