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平成11年度 戦略的基礎研究推進事業 「研究年報」
Vol. 1 (2000) 731
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「ゲノムの構造と機能」平成10年度採択研究代表者
「組換えを介したゲノム動態制御」

柴田 武彦
1) 理化学研究所 主任研究員
Abstract:  詳細な解析が進んだ結果、ゲノムは動的な存在であることが明らかになった。この事実は、老化、ガン化、遺伝疾患にも深く関わる。更に、遺伝の基本的な機構そのものについても再検討が必要になった。組換えを介したゲノム動態の機構と制御の理解は、新ゲノム制御技術の素材と結果予測·安全評価の理論基盤を提供すると期待できる。本研究では、組換えを介したゲノム動態制御について、遺伝子·分子機能から染色体·細胞の挙動までの総合的な理解と、高等動物での普遍性の検証、新技術の基盤構築を目指す。提案者らが明らかにした酵母からヒトまで保存されている組換え蛋白質群·染色体の挙動·分子反応·酵母変異体の表現型を手がかりに、また、例外的な高頻度で標的組換えをする鳥類DT40細胞を検証系として、(1)DNA鎖切断導入·修復、ゲノム流動化制御遺伝子、(2)染色体レベルのゲノム流動性·恒常性制御、(3)動物細胞株でのゲノム改変技術の研究を行う。平成11年度の研究により、組換えの制御で重要な機能をもつMre11蛋白の分子機能と細胞期のいずれについても理解が一歩進んだ。更に、高等動物では通常の増殖においても組換え修復への依存度が酵母よりも大きいことも明らかになってきた。また、ヒトRad51(RecA蛋白)関連蛋白質の解析、ヒトRad52蛋白の研究から、高等動物では、相同的対合活性をもつ蛋白質(蛋白質複合体)が複数存在し、しかも正常な生命活動のためには全てが必要であることが明らかになってきた(酵母では、相同的対合活性はRad51蛋白についてしか確認されていない)。更に、組換えの開始制御が、ストレス応答MAPキナーゼ経路、環状AMP依存性キナーゼ経路、接合型フェロモン応答シグナル伝達経路の下流で、クロマチン構造を開閉する形で制御されていることを明らかにした。

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