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平成11年度 戦略的基礎研究推進事業 「研究年報」
Vol. 1 (2000) 727
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「ゲノムの構造と機能」平成10年度採択研究代表者
「哺乳類特異的ゲノム機能」

石野 史敏1)
1) 東京工業大学遺伝子実験施設 助教授
Abstract:  生物のゲノムにはその生物種の持つ個々の遺伝子の情報と、それら遺伝子全体の発現を制御する個体発生に関係する情報が含まれている。このように生物の個体発生はその生物ゲノムの持つ全体的な機能発現といえる。さらにゲノムにはその生物種の生物進化の歴史である系統発生の情報が含まれている。個体発生と系統発生では扱われる時間軸が大きく異なるが、これらをつなぐ鍵は特定の生物群にのみ見られるゲノム機能であろう。体制の大きく異なる生物群の出現(大進化)には、突然変異だけでなく大幅なゲノム構造の再編までも含めた、新しいゲノム機能の獲得が必要であったと考えられる。現在見ている個体発生は、そのような生物群に特異的ゲノム機能と生物共通に存在する普遍的ゲノム機能の集積の結果の現れであろう。ゲノムインプリンティングは高等脊椎動物では哺乳類にのみ見られる遺伝子発現制御機構である。われわれはこれまでのインプリンティング遺伝子群の体系的分離と解析から、この遺伝子発現機構が哺乳類の個体発生のみならず、哺乳類の進化に重要であったことを示唆するデーターを得ている。そこで本プロジェクトでは、このゲノムインプリンティングを哺乳類特異的ゲノム機能と考え、個体発生、系統発生の問題から哺乳類の発生工学の問題まで、基礎科学、応用科学の枠を超えた新しいゲノム科学の展開をめざしている。

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