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平成11年度 戦略的基礎研究推進事業 「研究年報」
Vol. 1 (2000) 720
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「分子複合系の構築と機能」平成11年度採択研究代表者
「自己生成する高分子ナノ秩序体:高次構造制御と機能発現」

吉川 研一1)
1) 京都大学大学院理学研究科 教授
Abstract:  生体は核酸や蛋白質等の高分子や数多くの低分子化合物·イオンからなる、高度に複雑な自律的システムと見なすことが出来る。なかでも生体高分子の高次構造が幅広く種々の生体機能と関わっていることがますます明らかになってきている。DNAに関連する、我々のこれまでの研究から、個々のDNA分子が凝縮状態とコイル状態間で不連続な折り畳み相転移(1次相転移)を示すことが明らかにされてきた。さらに、DNAの単一分子鎖の折り畳み構造には、ドーナツや棒状などの多様な秩序が存在することを実験·理論両面から明らかにしてきている。そして、このような高次構造のスイッチング現象は遺伝子の転写や複製の制御とも深く関わっているものと予想される。本研究はこのようなDNA分子の高次構造のスイッチングとそれによる秩序構造の生成の研究を他の天然·合成高分子系に応用し、“単一分子鎖によるナノ秩序体の自己生成”といった分野を新たに切り拓くことを目的とする。具体的には、DNAやタンパク質のような機能性生体高分子や精密合成された人工高分子について人為的·合目的的に高次構造を制御し、新しいナノ秩序体を作り出す方法論の確立、さらに新たな機能発現を指向した高次構造の創出へと展開させる。本研究で得られた成果から、高分子科学等への学術上の寄与だけではなく、新機能性材料の開発等への多大な貢献が期待できる。

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