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平成11年度 戦略的基礎研究推進事業 「研究年報」
Vol. 1 (2000) 698
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「分子複合系の構築と機能」平成10年度採択研究代表者
「らせん協調ハイパー高分子の創製と構造·物性·機能の相関」

藤木 道也1)
1) 日本電信電話(株)物性科学基礎研究所 主幹研究員
Abstract:  私たちは、らせん性シグマ共役高分子=光学活性ポリシランが右巻⇔左巻らせん転移(らせん反転と略)を示すことを見いだしました。この発見をもとに高速·可逆のらせん素子としての基本特性の把握やらせん反転を示す他のらせん状高分子(ポリチオフェン,ポリイソシアネート,シゾフィランなどの多糖類)や低分子系の探索と新機能デバイスの可能性を探ることを研究の目的としています。ここで外場として、物理場(熱,電位)と化学場(水,液晶,種々の有機溶媒)、単結晶界面などを用いています。これらの研究を遂行するため、大阪大学、立命館大学、熊本大学、九州工業大学、東京工業大学を中心とする研究者たちと情報交換しながら協同研究を進めました。さらに国内の他大学(例えば,東海大学)や米国のポリテクニック大学との連携を深めながら研究の展開を行いました。本年度は、(1)らせん反転を示すジアルキルポリシランの創製と反転物性制御、分子動力学的な理解、(2)熱や良溶媒·貧溶媒組成で光学活性をスイッチしたり、メモリーできるアルキルアリルポリシランの創製とスイッチ·メモリー物性制御、分子構造に関する考察、(3)熱やキラル置換基の数や導入率でらせん反転を示すジアリルポリシランの創製と反転物性制御、(4)高速で熱履歴のない可視·近赤外用光学フィルターとして有望な、らせんジアルキルポリシランを用いた熱誘起コレステリック液晶の発見、(5)キラルアルキル置換ポリチオフェンとアキラルアルキル置換ポリチオフェンの混合比のみで光学活性の反転を示すポリチオフェン複合体の創製と反転物性制御、(6)2種類の光学活性らせんポリシラン(剛直性と半屈曲性)の持続長の決定ならびに紫外吸収·円二色信号の分子量依存性の測定、(7)半屈曲性セルローストリス(フェニルカルバメート)の分子特性解析、(8)稀薄溶液から準濃厚溶液中における半屈曲性ポリヘリシルイソシアネート鎖の絡み合いに関する分子特性解析、(9)電位印加によるAu単結晶上でのα-デキストリン分子の一次元·二次元自己組織化、(10)電位印加によるAu単結晶上でのフラーレン分子の二次元配列化、などに関しまして大きな進展が見られました。今後、(1)稀薄溶液中でのらせん(光学活性)反転の精密制御、(2)より実用を視野に入れたと固体薄膜やゲル分散でのらせん(光学活性)反転制御、(3)基本物理量であるらせん性高分子の特性解析、(4)固体基板上での分子配向·配列·結晶性の制御などに関しまして、さらなる成果が期待されます。

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