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平成11年度 戦略的基礎研究推進事業 「研究年報」
Vol. 1 (2000) 694
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「分子複合系の構築と機能」平成10年度採択研究代表者
「エネルギー変換機能を有する無機超分子系の構築」

堂免 一成1)
1) 東京工業大学資源化学研究所 教授
Abstract:  半導体光触媒を用いて水を水素と酸素に分解することにより光のエネルギーを直接水素という化学エネルギーに変換することが可能である。この光触媒を用いた水の分解反応の最終的な目標は太陽光により駆動する触媒系の構築である。この最終目標に近付くために達成すべき課題は、可視光照射下で水を水素と酸素に分解できる光触媒系の開発である。現在水を定常的に水素と酸素に分解できる光触媒はいずれも紫外光照射を必要とする。それに対して可視光照射下で水を完全分解できる光触媒が未だ開発されていないのは、水を酸化及び還元するために適切なバンドレベルを有し水の酸化還元に対して安定な物質が存在しないからである。よって可視光を吸収し水分解に適切なバンド構造を有する酸化物光触媒の開発が課題となる。バンドレベルの制御には種々の元素の組み合わせによる新規複合酸化物の合成という手段が考えられる。現在、主に取り組んでいるのは層状ペロブスカイト型複合酸化物をベースとした可視光応答性材料の開発である。層状ペロブスカイトは層間のアルカリ金属イオンと層状構造を形成する二次元のアニオンシートから構成されるがこのシートの部分はペロブスカイト構造を有している。これらの層空間には水分子のインターカレートが可能であり、大きな反応表面積を得ることができ、高活性化の一つの要因となる。ペロブスカイト構造には多様な元素の組み合わせが可能であり多機能化が期待できる物質群であり、層状ペロブスカイトにも同様のことが期待できる。これまでの結果から鉛を含むニオブ系層状ペロブスカイトが可視光照射により電子供与剤存在下で効率良く水素を生成できることが分かっている。またチタン系の層状ペロブスカイトにクロムをドープした触媒系でも可視光領域での光触媒活性が発現する事が明らかとなった。そしてこれらを用いた水の完全分解反応について検討していく予定である。その他の方向性としてはこれらの層状化合物と色素の複合化による光触媒材料の開発である。色素は可視光領域に広く吸収帯を有し水分解のためのエネルギー移動媒体と成り得る物も多く知られている。ただしこれらは単身では水素及び酸素の生成能力を持たないので、水素及び酸素形成能力のある固体触媒とのソフトケミカル的手法を用いた複合化により水分解のための無機複合超分子材料の構築が考えられる。現在層状光触媒と色素を複合化するソフトケミカル的手法は確立されており、今後上記材料の光触媒能を検討する。

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