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平成11年度 戦略的基礎研究推進事業 「研究年報」
Vol. 1 (2000) 638
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「電子·光子等の機能制御」平成10年度採択研究代表者
「表面吸着原子制御による極微細ダイヤモンドデバイス」

川原田 洋1)
1) 早稲田大学理工学部 教授
Abstract:  今後発展が期待される産業分野において、現在のSiを基盤とした半導体デバイスにかわる、新たな半導体デバイスへの期待は大きい。例えば、電気自動車の電力制御用のハイパワー低消費電力FET、移動体通信や衛星通信の中継点に必要な小型高出力高周波送信用FETなどの開発要請が高まっている。SiやGaAsでは不可能なこれらの用途にはSiC、ダイヤモンド、GaN等のワイドバンドギャップ半導体材料の使用が検討されている。これらワイドバンドギャップ半導体の中でダイヤモンドは電子および正孔移動度が最高、ブレークダウン電界はSiC、GaNの数倍(Siの30倍)、熱伝導度はSiCの4倍、GaNの15倍(Siの10倍)であり、未来の超高集積デバイスに不可欠な物性を有している。また、SiCやGaNで問題となっている反位相境界やポリタイプがなく、将来結晶成長の完成度が最も高くなると考えられる。実際、気相合成ホモエピタキシャルダイヤモンドの欠陥密度は近年著しく減少し、現在SiCやGaNと同等あるいはそれら以下となっている。研究代表者らは、完全性の高い水素終端ダイヤモンド単結晶表面において、Si-MOSFET反転層やAlGaAs/GaAsヘテロ界面の10倍以上の表面キャリア密度(正孔表面密度で1013cm-2以上)を有し、しかも、正孔が表面から5nm以下の浅い分布を持つp型表面伝導層が発現することを明らかにした。これを、ソース、ドレインおよびチャネルに使用し、電流駆動能力でSi-MOSFETと同等の新型FETを開発している。ダイヤモンド水素終端構造は、その上に他の膜を堆積しても安定であり、これを使用した極微細構造における新デバイスが期待される。本研究では、このダイヤモンド表面チャネル型FETを基礎に、ヘテロエピタキシャル成長技術、微細加工技術の高精度化によりFET特性の向上を行い、高電界、高周波数でのデバイス動作を検討する。さらに、表面吸着原子層をnmスケールあるいは原子スケールで行い、他の半導体では不可能な超微細FETあるいは新機能デバイスを作製する。ダイヤモンドは、表面電子構造を決定する表面吸着構造が大気中で安定であり、nmスケールデバイス形成には最も適した半導体材料である。本研究は、表面科学と電子デバイスの2分野の知的資産が有機的な連携をとるおそらく最初の例となり得る。

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