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平成11年度 戦略的基礎研究推進事業 「研究年報」
Vol. 1 (2000) 620
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「電子·光子等の機能制御」平成10年度採択研究代表者
「最高性能高温超伝導材料の創製」

伊原 英雄1)
1) 電子技術総合研究所 ラボリーダー
Abstract:  研究のねらい:独自に発見したCu-1234(CuBa2Ca3Cu4O12-y)系高温超伝導材料を基に、低い超伝導異方性を活用し、「最高性能超伝導材料の創製」を目指す。そのため、電子構造制御、超伝導波動関数制御、並びに薄膜作製の新しい手法を開発し、Tcが高く、かつ77KでJc、Hirrが最高性能を持つ超伝導材料を実現する。これにより超伝導線材、ジョセフソン素子、高周波デバイス等の応用に最適な最高性能超伝導材料を創製する。概要と成果:Cu-1234系が最高性能超伝導材料としての素質をもつことを示すため、高Tc、高Jc、高Hirrの可能性をその組成、結晶構造、バンド構造、ホール係数、NMR、光電子分光の測定から明らかにすると共に、その特性の極限追求を行った。Tcの向上では、Cu-1234よりも作製しやすいCu-1223系のCu1-xTlx-1223でTc=133.5Kを達成し、Hg-1223の最高値135Kを越える見通しを得た。また、Cu-1234系が高圧相の難合成物質であることから、低圧合成法の開発を目指し、新しい薄膜作製法であるAPE法とSAE法の開発を進めた。特にAPE法では、再現性を阻害している要因が炭酸にあることを明らかにすると共に、その要因を除去する方法を研究した。SAE法では膜成長プロセスの制御の鍵が格子整合性あることを明らかにすると共にそれを解決する方法を研究した。Cu-1234系の特異なオーバードープ現象を明らかにするためアンダードープ領域からオーバードープ領域に移行する場合の電子相図を理論と実験から研究した。Cu-1234系での最高性能性を確認する目的でCuO2面の総数n(3→5枚)と平均キャリアー濃度δavを系統的に変化させながらバンド計算とNMR測定を行い、4配位、5配位の各CuO2面内の局所的なキャリアー濃度と超伝導特性4層、5層のCu系の関係を明らかにした。今後の見通し:Cu-1234系がオーバードープ状態でも液体窒素温度77Kの1.5倍であるTc=117Kを維持でき、最高のJc、Hirrを達成できる見通しを得た。現在Cu1-xTlx-1223系でTc2、Jcとも最高値を実現しているが、Cu-1234系でTc、Jcの最高値を実現する見通しを得た。

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