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平成11年度 戦略的基礎研究推進事業 「研究年報」
Vol. 1 (2000) 588
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「極限環境状態における現象」平成9年度採択研究代表者
「局所高電界場における極限物理現象の可視化観測と制御」

藤田 博之1)
1) 東京大学生産技術研究所 教授
Abstract:  真空トンネルギャップ中には、原子サイズの局所領域に大きな電界·電流·電磁場·電子相互作用が集中し、様々な動的原子·電子過程、励起·緩和過程、局所化学過程が発現する。本研究は、電界107V/cm、電流密度108A/cm2、という極限的状況下における単一原子·分子の振舞いを可視化観察し、その物理特性の解明や制御を行うことが目的である。これを達成するため、大きく分けて3つの柱を建てて研究を進めている。まずマイクロマシングループでは、半導体マイクロマシン技術により高性能·高機能の1チップマイクロマシンSTMを実現した。わずか0.5mm角程度の大きさのデバイスで、トンネルギャップを0.1nmの精度で調節可能である。今後さらに改良を進め、原子オーダの現象や電界を制御するナノツールの実現を目指す。第2の可視化グループでは超高分解能電子顕微鏡を製作し、単一原子の可視化を目指す。電子銃から出る位相のそろった電子ビームを2つに分け、一方は試料(トンネルギャップ)を通し、もう一方は参照ビームとしてそのまま進行させる。両者の電子波の干渉測定により試料を通過した電子ビームの位相の変化を検出し画像を得る。装置が完成したので、今後は電子ビームをマイクロSTMのトンネルギャップ中に通すことにより、ギャップ中の原子·分子の位置や電界分布を可視化する手法を確立する予定である。第3の理論解析グループでは、局在する高電界場中での原子や分子の振る舞いや、固体からの冷電子放出機構を第一原理に基づく理論により解析する。従来法に比べ、簡易なアルゴリズムを考案した。最終的には、実験と理論解析の結果を対比することで、STMにおけるトンネル現象の精密で実証的な描像を確立し、局所高電界場における極限物理現象を原子レベルで理解することをめざしている。

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