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平成11年度 戦略的基礎研究推進事業 「研究年報」
Vol. 1 (2000) 574
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「極限環境状態における現象」平成9年度採択研究代表者
「新しい量子自由度·軌道の動的構造の解明」

遠藤 康夫1)
1) 東北大学金属材料研究所 教授
Abstract:  我々は半導体テクノロジーを超える電子制御を可能にするテクノロジーの基本概念の構築を目指し、電子の動き(モビリテイ)が環境を少し変えるだけで自発的にしかも劇的に変化する特異な現象を起こす遷移金属酸化物を研究対象に選んだ。従来から磁性、格子歪み、電荷の注入がこの現象と深く関わることが指摘されて来たが、本質的な機構解明には到っていない。我々は電子の軌道に注目したが、電子軌道は結晶格子の空間対称性に強く依存し、しかも電子間の斥力やスピン自由度が持ち込む相関効果が加わった相互作用に敏感である為に、問題解決に最も適切な物理量であると確信するからである。物理的概念として所謂「複雑系」の物理とも関連しているが、多体効果が前面に出る強相関電子系に於ける機構が「複雑系」全体に拡張できる一般法則に成り得ると期待している。このプロジェクトの研究には、新しい量子自由度としての軌道の直接観測に中性子、放射光X 線非弾性散乱を用いる。プロジェクトの最初の2年間を費やして「SPring 8」に世界最高級の新しいX 線分光装置を建設した。中性子散乱と共にこの装置を用いた実験成果が機構解明や強相関電子の新しい概念構築に大きな寄与をするに違いない。

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