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平成11年度 戦略的基礎研究推進事業 「研究年報」
Vol. 1 (2000) 496
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「極限環境状態における現象」平成7年度採択研究代表者
「反強磁性量子スピン梯子化合物の合成と新奇な物性」

高野 幹夫1)
1) 京都大学化学研究所 教授
Abstract:  物質探索から物性測定まで有機的に行える当研究チームの特徴を生かし、新しい量子スピン物性を遷移金属酸化物を舞台に実現する研究を進めている。平成11年度は、新たな重点項目として、微細加工を加えた薄膜試料における物性探索をとりあげた。そのために新庄輝也教授グループ(京大化研)の参加を得て、ペロブスカイト型酸化物、およびそれと金属磁性体との複合体に微細加工を加え、(1)強磁性酸化物の磁区構造制御、(2)金属強磁性を用いた大きい局所磁場印加、(3)パルス電場の付与による電界誘起相転移の可能性を探る研究を始めた。高圧合成法と薄膜作製法を用いた物質探索·合成については、高圧下での単結晶作製((VO)2P2O7 やCa2-xNaxCuO2Cl2)、2本足梯子物質(Ca14Cu24O41やBa14-xLaxCu24O41)、および酸素ホールのダイナミックスの研究の舞台となるAFeO3(A=Ca,Sr)の単結晶薄膜の作製に大きな進展があった。新しい量子物性の開発に関しては、金属的な1次元鎖を有するRBa2Cu4O8(R=Y,Pr)を舞台に朝永ラッティンジャー液体と呼ばれるエキゾチックな金属相の可能性を探り、さらに3次元フラストレーション系であるスピネル型LiV2O4がキャリアドープされた量子スピン液体状態にあること、そしてそれが遷移金属酸化物としては初めての重い電子系状態形成へと導いていることなどの発見があった。銅酸化物の高温超伝導についても、転移温度以上の領域で、フェルミ準位上に超伝導のペアリングの揺らぎに由来するものと反強磁性相関に由来するもの2種類の擬ギャップが開いていること、d波超伝導体にもかかわらずスピンのチャンネルから見たギャップは等方的であることなどを見出した。

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