TOP > 巻一覧 > 目次一覧 > 書誌事項


平成11年度 戦略的基礎研究推進事業 「研究年報」
Vol. 1 (2000) 491
[PDF (888K)] [引用文献


「極限環境状態における現象」平成7年度採択研究代表者
「衝撃波面形成過程と新化学反応プロセス」

近藤 建一1)
1) 東京工業大学応用セラミックス研究所 教授
Abstract:  衝撃波面は、超高圧力·超高温度·超加速度に加え、それらが空間的·時間的に極端な勾配をもった独特なパルス反応場とみることができる。本研究は、この未開拓の極限環境を定量的に計測する技術を開発し、新物質創製の新しい方法論の構築を目指している。本年度の最大の成果は、本研究課題の中核として準備を進めてきた衝撃圧縮中の時間分解型X線回折実験に成功したことである。すなわち、フェムト秒ハイパワーレーザーを用いて強力なX線パルスの発生を行うことができるようになり、そのX線パルスと同期した衝撃圧縮状態をシリコン結晶中に実現させ、ピコ秒時間分解型X線回折実験を行うことができた。衝撃波の進展に伴って、時々刻々と変化している結晶格子歪みパターンをストロボ断層写真のように回折パターンが得られたことになる。その結果、埋め込み型センサーや観測窓界面の擾乱が全くない、衝撃波の純粋な時間進展過程の実時間その場観察を行うことができた。この技術は、衝撃波の診断だけでなく、相転移や化学反応の過渡現象を追究するための新しいツールとしても期待される。また、ナノ秒レーザーを用いた衝撃圧縮中の時間分解型ラマン散乱実験技術が確立した。テフロンの過渡状態のラマンスペクトルが得られ、量子科学計算から、その過渡状態は炭素間の化学結合が一時的に切断されたものと解釈することができた。さらに、フラーレンをセンサー物質として衝撃圧縮回収実験を行って、その物質応答を凍結·評価している。一方、状態方程式に関する研究では、新しい衝撃銃を用いた飛行板衝突による従来型の衝撃圧力の領域拡大を試みるとともに、圧力目盛(スケール)基準となっている食塩の熱放射測定から圧縮状態の検討を行った。また、核融合研究用巨大レーザーを用いた衝撃圧縮技術と実時間診断技術の開発を試みた。

[PDF (888K)] [引用文献

Copyright(c)2000 科学技術振興事業団