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平成11年度 戦略的基礎研究推進事業 「研究年報」
Vol. 1 (2000) 46
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「生命活動のプログラム」平成7年度採択研究代表者
「オルガネラ構築と細胞機能発現制御の分子機構」

藤木 幸夫1)
1) 九州大学大学院理学系研究科 教授
Abstract:  複雑な内部構造をもつ真核細胞の諸々の生命活動は細胞オルガネラの構造と機能に大きく依存している。これら細胞内構造並びに細胞構造は、遺伝情報の翻訳産物であるタンパク質が細胞内で空間的に特定の秩序をもって配置されることにより構築されている。すなわち遺伝子が生体膜を隔てた場をも支配できる基本原理である。従って、そのメカニズムを解明することは遺伝子発現から細胞機能の発現と制御という一連の生命活動を理解するうえで極めて重要な研究課題である。本戦略的基礎研究推進事業ではペルオキシソーム、核、ミトコンドリア、小胞体、ゴルジ体、リソソームなど細胞内オルガネラの動的存在状態とその制御機構、並びに種々の病態をもたらす障害機構をペルオキシソーム系を主体として明らかにし、それらの成果を総合的に考察することにより「オルガネラ構築と細胞機能発現制御」の基本原理を導き出すことを目的として研究を行っている。本研究課題は真核細胞におけるオルガネラの膜系という巨大かつ複雑な構造体を研究対象とし、しかも扱う現象はタンパク質の生合成に伴う細胞内での移動という時間的にも空間的にも極めてダイナミックな現象である。従って、今年度はin vivo,in vitroの両系を駆使してタンパク質の細胞内選別輸送·局在化およびペルオキシソーム系を中心にオルガネラ形成にかかわるより多くの細胞内因子の同定とそれらの機能解明に主力を注いだ。本課題研究は遺伝情報発現ステップの全貌の理解という生命科学研究における極めて重要な命題解明に分子的基盤を与えるだけでなく、その成果として、将来有用物質の分泌生産、オルガネラを利用したバイオテクノロジーや人工細胞の開発など応用への道も開くことが期待される。

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