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平成11年度 戦略的基礎研究推進事業 「研究年報」
Vol. 1 (2000) 445
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「単一分子·原子レベルの反応制御」平成9年度採択研究代表者
「遷移金属を活用した自己組織性精密分子システム」

藤田 誠1)
1) 名古屋大学大学院工学研究科 教授
Abstract:  分子をうまく設計すると、分子同士が安定な状態を求め、みずから組み合わさって高次構造をつくりだし、新しい機能を発現させることができる。本研究はこのようなしくみに着目して、分子が自然に集まる現象を解明し、設計し、そして実際にそのような分子の集合体を自発的に構築することで、分子や物質を組み立てる全く新しい原理を確立していこうとするものである。生体系がこのような分子集合の駆動力に水素結合を巧みに利用しているのに対して、本研究では、配位結合を駆動力とする点を特徴としている。すなわち、適度な結合力と明確な方向性を持つ配位結合を駆動力として精密な分子集合体を自発的かつ定量的につくることができる。このような観点から、これまでに、大環状構造、連結環状構造、かご構造、カプセル構造、チューブ構造等のさまざまな特異的な巨大構造体の自己集合を達成してきた。いずれも既存の化学合成では極めてつくりにくい構造体である。また、これらの構造体の多くが、その形状を反映した特異空間を骨格内部に有することから、分子内部空間における孤立空間の化学を展開し、不安定分子の安定化や特異的な物質変換を達成した。このように、本研究は人工系での分子集合を次世代の分子·物質構築としてとらえ、その体系化を目指すものである。長期展望として、このような着想の展開により、有機化学と無機化学、さらには自然科学の分野を超えた新しい領域をつくることを目標とする。

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