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平成11年度 戦略的基礎研究推進事業 「研究年報」
Vol. 1 (2000) 429
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「単一分子·原子レベルの反応制御」平成9年度採択研究代表者
「超臨界流体溶媒を用いた反応の制御と新反応の開拓」

梶本 興亜1)
1) 京都大学大学院理学研究科 教授
Abstract:  本プロジェクトでは、臨界点より高い温度に保持された超臨界流体中での化学反応の制御と展開を目指している。その際に鍵となるのは、超臨界流体中で溶質分子が溶媒和されていることである。低い密度であるために拡散などが有利である一方で、低密度であっても溶質分子の周りには溶媒和によって十分な溶媒密度が保持されており、このことが化学反応を促進する役割をしている。ここでは、クリーンな炭酸ガスおよび水の超臨界流体を主として用いる。昨年度までは超臨界炭酸ガスを中心として研究を行ってきたが、世界的にも超臨界水技術が急速に発展し始め、研究が加速していることに鑑み、本年度は超臨界水中の反応研究の準備を行い、基礎的データを集めた。超臨界水は、臨界温度374°C、臨界圧力214気圧であるために、通常の反応装置では研究が難しく、これまでは特殊な研究に限られてきた。しかし、溶媒極性が密度と温度によって大きく変わることや、水そのものが反応試薬·触媒として使えることが大きなメリットになっている。科学的にも、水素結合が高温高圧でどうなるか、溶媒和の状況がどの様に変わるかなど興味深い点が多い。実際の研究に際しては、高温高圧反応容器の設計から研究を開始する必要がある。本年度は、分光用のセルやNMRキャビティ、また、流通型の反応装置の製作などの研究の立ち上げを行い、溶質分子やイオン周囲の溶媒和構造の密度による変化を観測するとともに、基本的な化学反応について生成物と反応速度を決定した。

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