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平成11年度 戦略的基礎研究推進事業 「研究年報」
Vol. 1 (2000) 359
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「単一分子·原子レベルの反応制御」平成7年度採択研究代表者
「新規“有機ゼオライト”触媒の開発」

青山 安宏1)
1) 九州大学有機化学基礎研究センター 教授
Abstract:  有機ゾルーゲル法とでも呼べる簡単な方法によりZr(IV)などのルイス酸金属イオンを有機ネットワークに固定化でき、得られた多孔質の不溶性固体触媒がディールス·アルダー反応などにおいて著しい活性を示すことを明かにしてきた。一方、希土類のLa(III)を固定化したものはマイケル付加やアルドール縮合などの典型的な有機合成反応に用いることができる。11年度にはこれらのルイス酸性の金属に加え、Pd(II)やRu(II)などの金属の固定化も検討した。回収が容易で再利用可能な固体触媒は省資源や環境保全の観点から意義深いが、化学プロセスのグリーン化をさらに追及するならば溶媒(媒体)としての水の利用は避けて通れない問題である。固体触媒を水の中で使う。これこそ究極の触媒反応であり、平成11年度に集中的に検討した課題の一つである。金属ネットワークを用いて多孔質が維持できるのであれば触媒以外にも様々な応用が考えられる。メタンや水素ガスなどの吸蔵体としての利用である。この点についても検討を加えた。最終年度も近づいたこともあり、改めて研究の推移を眺めれば、相互作用ネットワークを形成する分子間力として水素結合から金属配位への大きな転換があった。水素結合は一般に弱く、多孔性を維持できないことが致命的な欠点であり、この流れは妥当なものであるが、一方では、水素結合で本当に多孔体が形成できないのか、という本質的な問題が常につきまとっていた。より強固な水素結合ネットワークの構築を目指した努力のなかから非常に興味深い知見も得られた。

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