TOP > 巻一覧 > 目次一覧 > 書誌事項


平成11年度 戦略的基礎研究推進事業 「研究年報」
Vol. 1 (2000) 326
[PDF (331K)] [引用文献


「量子効果等の物理現象」平成8年度採択研究代表者
「有機/金属界面の分子レベル極微細構造制御と増幅型光センサー」

横山 正明1)
1) 大阪大学大学院工学研究科 教授
Abstract:  本研究は、申請者らが初めて見い出した、有機顔料薄膜/金属接合界面における10万を越える量子収率を示す光電流増倍現象の機構を解明し、有機/金属接合における電荷注入に関する新たな概念を提出するとともに、光電子増倍管に匹敵する高感度薄膜増幅型光センサーへの展開、さらには有機EL(電界発光)素子との組み合わせによる新しい原理に基づく光-光変換素子、光増幅素子、光演算素子など新規な光·電子機能デバイスへの展開を図るものである。すでに、この増倍現象が一連の有機半導体と呼ばれる光電導性有機顔料においてかなり一般的に観測され、有機薄膜の本質的な特性に起因するものであること明らかにした。またこの増倍現象に対し、金属/顔料薄膜界面の不完全接触に由来する、有機顔料薄膜固有の分子サイズの行き止まり構造(構造トラップと呼ぶ)に光生成ホールが蓄積することによって接合界面に電界が集中した結果、電極からのトンネリング電子注入が誘起されるという増倍メカニズムを提出し、それを種々の角度から検証してきた。また、大量の電極からの電荷注入が光制御できることから、この光電流増倍有機薄膜に有機電界発光素子を積層一体化することによって、赤外光の可視光への変換など新しい原理に基づく波長変換素子、光増幅素子、光演算素子への展開が可能であることを示した。引き続き有機薄膜表面の分子サイズの極微細構造と光電流増倍特性の関係を明確にし、増倍現象を引き起こすトラップとして働く有機/金属界面における分子レベルの極微細構造を制御できる方法を確立して、高増倍率を保持して高速で応答する実用可能な光電流増倍有機薄膜を実現するとともに、光·電子機能有機材料の新たな物性応用分野を開拓することを目指している。

[PDF (331K)] [引用文献

Copyright(c)2000 科学技術振興事業団