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平成11年度 戦略的基礎研究推進事業 「研究年報」
Vol. 1 (2000) 283
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「量子効果等の物理現象」平成7年度採択研究代表者
「配列したミクロ空間での新物質系の創製と物性」

寺崎 治1)
1) 東北大学大学院理学研究科 助教授
Abstract:  配列したミクロ空間を作成し、それを利用してクラスターを三次元的に配列させた新しいタイプの物質系を作成する。これらの物質系の構造解析とその生成機構の解明、および、クラスターにおける量子効果等による新奇な物性の発現とその解明を行う。配列したミクロ空間として新奇のゼオライトを合成し、構造解析を行い鋳型分子による構造制御を試みた。また、多重散乱の影響を検討した上で、電子回折強度の定量測定と直接法を組み合わせると構造解析が可能になることを、新奇な数百ナノメートルのゼオライト微結晶の構造を初めて解いて示した。新しい配列メソ空間を与えるメソ多孔体について、その高分解能電子顕微鏡像から、3次元構造を求める手法を確立した。これまでに、MCM-48, SBA-1,-6,-8,-16の3次元構造を決定し、それらの生成過程の解明を進めている。世界にさきがけて、層状ケイ酸塩·カネマイトと界面活性剤からメソ多孔体を合成してきたが、今回、カネマイト層の連続性を維持しながら界面活性剤の組織化を利用する新規メソポーラスシリカ(KSW-2)の合成に成功した。また、ミクロ、メソ多孔体にMo,Coの酸化物、硫化物クラスターを合成し、その構造と触媒機能を調べた。内径約11Å のゼオライトLTAの細孔を用いてカリウムクラスターを単純立方構造で配列させると、クラスター間の相互作用によりs電子系で初めての強磁性が観測される。この系における強磁性は、軌道縮退した1pクラスター準位において、Dzyaloshinsky-Moriya(DM)相互作用によってスピンがキャントした為に生ずるという機構が最も可能性が高いことがわかってきた。また、ゼオライトFAUの内径約13Åの細孔を用いてカリウムクラスターをダイヤモンド構造で配列した系では、金属絶縁体転移が観測されることがわかってきた。また、種々のアルカリ金属クラスターの系において、核磁気共鳴により構造と磁性について研究した。AgI、AgBr、CuIクラスターをゼオライトLTAやFAU中に作成し、その光学特性、配列、吸着機構を解明した。特に、金属及びハロゲンイオンの種類の違いに着目して解析を進めている。

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