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平成11年度 戦略的基礎研究推進事業 「研究年報」
Vol. 1 (2000) 25
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「生命活動のプログラム」平成7年度採択研究代表者
「線虫全発生過程の遺伝子発現プログラム」

小原 雄治1)
1) 国立遺伝学研究所 教授
Abstract:  ゲノムDNAにはその生物を規定するすべての遺伝情報のセット(これをゲノムとよぶ)が書き込まれている。生物が卵から発生していくいわば「台本」が書き込まれているのである。ゲノムDNAの塩基配列の決定は多くの生物で決定あるいは進行中であるが、われわれはまだ塩基配列から「台本」を読み取るルールを知らない。本研究のねらいは、シンプルだが優れたモデル系である線虫を使って、その「台本」を明かにしようとするものである。このために「役者」である遺伝子のすべてを見つけだし、それらが発生の「いつ、どこで、何を」しているかを網羅的に調べる。その結果から、情報学の手法を駆使して、発生のプログラム(すなわち台本)を逆にあぶりだそうとするものである。線虫でのプログラムは高等生物でも共通なことが多いので、ヒトゲノムなどの機能解析への利用価値は測りしれない。線虫のゲノムDNAの塩基配列は99%が決定されたが、われわれは相捕的なアプローチとして、発現遺伝子の総ざらえをおこなってきた。すなわちmRNAをDNAの形にかえたcDNAのセットを作成し、塩基配列をもとに分類し、約10,000遺伝子を見いだした。これは予想される全遺伝子の1/2以上である。これまでに7,000遺伝子について発生のどの時期のどの細胞/組織で発現しているか解析を終え、残りも今年度中に終了予定である。その発現パターンを情報学的手法で似たものに分類するクラスタリング解析を進め、共通パターンの遺伝子群については、発現調節領域や遺伝子機能の共通性について実験的検証をおこなっている。遺伝子機能については、RNAi(2本鎖RNA注入による遺伝子機能阻害)を体系的に実施した。現在はまず初期胚に焦点をあて、この局面に関わる全遺伝子の働きと関係付けを行なっている。今後、対象の発生局面を少しずつ後期にずらせて、発生の「台本」読み取り作業を進めて行く予定である。

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