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平成11年度 戦略的基礎研究推進事業 「研究年報」
Vol. 1 (2000) 237
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「生体防御のメカニズム」平成9年度採択研究代表者
「免疫系のフレームワーク決定及び免疫制御の分子機構」

笹月 健彦1)
1) 九州大学生体防御医学研究所 教授
Abstract:  免疫システムは多様な感染源との相互作用を通して進化してきた生体にとって必須の防御機構である。このため、T細胞受容体(TCR)は理論上1015を越す高度の多様性を獲得し得るが、実際にはTCRは胸腺において自己の主要組織適合抗原(MHC)およびそれと結合した自己ペプチドを同時に認識することによって、この多様性の中から(1)自己MHCによる拘束性の獲得(正の選択)、および(2)自己反応性TCRの除去(負の選択)、という二大選択を受け、免疫システムのフレームワークが決定されている。一方胸腺におけるこの二大選択を経て生き延びたT細胞は、末梢において自己のMHCと結合した細菌やウイルス由来のペプチドを認識して、量的にも質的にも様々な免疫応答を惹起し、感染防御あるいは逆に自己免疫疾患発症など、生体にとっては正負の両面の機能を有する。本研究は、1)胸腺における正および負の選択機構、2)末梢におけるMHC多重遺伝子族による免疫応答の制御機構、をそれぞれ分子レベルで解明し、その理解に立脚して、3)先鋭的な免疫応答制御法を確立することで、感染症、自己免疫疾患、アレルギー、GvH病、癌など現代医学が抱える難治性疾患の真の治療法、予防法の確立に資すると共に、生物学的見地から、4)免疫系の構築とその恒常性維持の分子機構を解明することを目的に研究を進めている。これまで、種々の遺伝子改変マウスを樹立し、胸腺において“自己”と“非自己”がいかにして識別され、その破綻がいかにして自己免疫に向かうかに関して、新しい知見を得た。また、MHC結合ペプチドライブラリーや、マルチバレント可溶性MHCおよびマルチバレント可溶性TCRの開発を行い、未知抗原ペプチドの同定や抗原特異性免疫制御法の確立に向けた研究成果を修めると共に、免疫系の構築およびその恒常性維持に重要な役割を演じると考えられる新規遺伝子を単離し、ノックアウトマウスの作製等を通じて現在その機能解析を進めている。

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