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平成11年度 戦略的基礎研究推進事業 「研究年報」
Vol. 1 (2000) 185
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「生体防御のメカニズム」平成8年度採択研究代表者
「サイトカイン機能不全の分子機構と遺伝子治療」

菅村 和夫1)
1) 東北大学大学院医学研究科 教授
Abstract:  本年度は各研究グループにおいて以下のような研究成果を得た。
1)リンパ球の初期発生に必須なサイトカイン共通受容体γc鎖を介する細胞内シグナル伝達に関わると考えられる機能分子(STAM1、STAM2、AMSH)に関して、それらの各遺伝子の欠損マウスを作出した。その結果、それら単独欠損マウスでは免疫不全はみられなかったが、STAM1/2ダブル欠損マウスは胎仔死となることが分かった。他方、TNFファミリー分子の一つであるOX40リガンド(OX40L)の欠損マウスを作出し、同マウスが抗原提示機能不全を呈し、免疫不全になることを明らかにした。2)成体型の造血幹細胞は胎生期のAGM(aorta/gonad/mesonephros)領域で発生し、胎生肝臓で増殖·分化を行った後に、成体の造血組織である骨髄に移行すると考えられている。マウス胎仔の造血組織のin vitro培養系を用いて、造血細胞の発生·増殖·分化·移行のプロセスに関与するサイトカイン、細胞内シグナル伝達分子、転写因子などの機能を解析した。3)アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターの実用化を推進するため、その作製法(パッケージング細胞株開発など)と応用に関する基礎研究を行った。また、造血幹細胞遺伝子治療のための選択的増幅遺伝子の開発、ならびに、X連鎖重症複合免疫不全症(XSCID)やX連鎖慢性肉芽腫症の免疫不全マウスを用いた遺伝子治療モデル実験を行った。4)T細胞分化に不可欠なT細胞抗原レセプター(TCR)のa/b鎖遺伝子座のエンハンサーは、各鎖特異的でなく分化段階特異的に活性化されること、およびallelic exclusionはb鎖遺伝子座のエンハンサーに依存しないことを明らかにした。また、T細胞の選択的分化は、c-fos遺伝子の転写レベルでなく翻訳レベルで決定され、そのc-Fos発現にはAML-1が関与することを明らかにした。

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