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平成11年度 戦略的基礎研究推進事業 「研究年報」
Vol. 1 (2000) 147
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「生体防御のメカニズム」平成7年度採択研究代表者
「カルシウムシグナル研究の先端的手法による展開」

飯野 正光1)
1) 東京大学大学院医学系研究科 教授
Abstract:  収縮、分泌、免疫、脳機能などに代表される生命維持に必須な生体機能の制御メカニズムにおいて、Ca2+シグナルは極めて重要な役割を担っている。本研究グループは、Ca2+シグナル機構の本質に迫るべく、最先端の研究手法を応用·開発して研究を展開している。我々は、細胞レベルから、細胞内小器官そして分子レベルへ微視的に解析を進めるという方向と、分子·細胞レベルから、組織あるいは個体レベルへ進む方向の2通りの研究方針を強く意識してきた。総括的な理解にはどちらも重要だと考えるからである。これに沿って、細胞下レベルのCa2+イメージング、分子機能解析、新規分子の探索を進めるとともに、組織レベルのCa2+イメージング、個体機能の解析を強力に推進してきた。本研究グループの研究実施計画は概ね達成されつつあると考えており、世界に先駆けた発見が以下に例を上げる通り行われている。1)細胞内Ca2+放出機構の担当分子であるリアノジン受容体およびIP3受容体の分子的多様性と機能の関係を明らかにした。2)血圧制御に重要な役割を果しうる、新しい血管平滑筋細胞のCa2+オシレーション機構(Ca2+リプル)を発見した。3)B細胞受容体刺激に続くCa2+動員抑制機構にSHIPを介する新たな経路を発見した。4)細胞膜と細胞内Ca2+ストア膜の近接構造を規定する新規分子群を発見した。5)著しく高い空間解像度を持つ多光子励起画像システムを独自に構築し、外分泌腺房組織で開口放出過程の可視化解析に成功した。6)Ca2+シグナルの中枢神経シナプス形成における意義を明らかにした。7)Ca2+以外のシグナル分子の可視化にも取り組み、初めて細胞内IP3動態の可視化に成功して、Ca2+シグナル系研究に新たな視点を導入した。

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