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平成11年度 戦略的基礎研究推進事業 「研究年報」
Vol. 1 (2000) 132
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「生命活動のプログラム」平成9年度採択研究代表者
「酸性オルガネラの形成と機能の研究」

二井 將光1)
1) 大阪大学産業科学研究所 教授
Abstract:  動物細胞の細胞質には、内部が酸性の各種のオルガネラが存在し、細胞外からの物質のとりこみ、情報伝達などに関与し、多彩な機能を果たしている。これらの内部はpH 6.5∼4.5 になっており、酸性オルガネラと呼ぶにふさわしい。酸性オルガネラの多彩な機能を理解すると共に、遺伝子からオルガネラの形成機構と、H+ポンプ(V-ATPase)、イオン·チャネルなどによって、内部酸性環境が形成される機構を明らかにすることを本研究の目的としている。平成11年度は次のように研究を実施した。V-ATPaseは輸送路部分(V0)および表在性部分(V1)を持ち、それぞれ多数のサブユニットから構成されている。このV-ATPaseのモデルとなりうるF-ATPaseの反応機構を検討し、γc サブユニットが複合体として反応中に回転していることを示した。さらにマウスと線虫を用いて検討し、H+の輸送に関与しているサブユニットには多彩なイソフォームが存在することを示した。すなわち線虫に2種のcサブユニットを、マウスには3種のaサブユニット·イソフォームa1、a2、a3を同定した。a3が破骨細胞の形成とともに誘導され、細胞形質膜に他のサブユニットとともに集合し、細胞外を酸性化しているという結果を得た。マウス受精卵に多数の酸性オルガネラが存在し、ブラストシスト以降に形態的に大きな変化をすることを見出した。これに対応するようにcサブユニット欠失マウスは64細胞期までは発生したが、子宮壁には着床しなかった。同様に線虫において検討したところ、V-ATPaseがoocytegenesisとgastrutationに必須であった。これらの結果はV-ATPaseの形成する酸性環境が初期発生にきわめて重要であることを示唆している。さらに、オルガネラとしてのリソソーム/エンドソームの形成に関与する新しいタンパク3種を同定した。

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