TOP > 巻一覧 > 目次一覧 > 書誌事項


平成11年度 戦略的基礎研究推進事業 「研究年報」
Vol. 1 (2000) 1226
[PDF (1380K)] [引用文献


「内分泌かく乱物質」平成10年度採択研究代表者
「核内受容体·共役因子複合体と内分泌かく乱物質」

名和田 新1)
1) 九州大学医学部 教授
Abstract:  ステロイドホルモンと結合した受容体は、アンドロゲン受容体の場合は細胞質から核内へ移行し(核移行)、エストロゲン受容体の場合は直接に標的遺伝子の転写活性を制御する。この際、転写共役因子と複合体を形成し、この複合体が基本転写因子群と結合することによって標的遺伝子の転写調節が行われる。我々のチームは、ステロイドホルモン受容体と転写共役因子群より構成される複合体に注目し、内分泌かく乱物質が、この複合体形成さらには基本転写因子群とのコミュニケーションを障害することを明らかにしつつある。レポーター遺伝子を用いたスクリーニング法と、レーザー共焦点顕微鏡を用いた三次元画像解析システムを組み合わせて化学薬品をスクリーニングし、新規の抗アンドロゲン活性を有する化学薬品の同定、さらに内分泌かく乱物質の作用機序別の分類の糸口を得た。また、エストロゲン受容体のα、βの2種類のサブタイプごとに異なるエストロゲン活性を有する新規の内分泌かく乱物質を同定した。ステロイドホルモンの特異的な作用は、受容体のみではなく、受容体特異的転写共役因子によっても規定されると考えられる。アンドロゲン、エストロゲン受容体に対する特異的転写共役因子を同定することは、内分泌かく乱物質の作用機序を解明するうえで必須である。最近、ステロイドホルモン受容体の転写活性調節領域であるAF-1領域が、受容体特異的、組織特異的な転写調節に深く関与していることが明らかにされ、我々も、両受容体に対する特異的共役因子のクローニングを遂行中である。また、外因性薬剤の解毒に関与する核内受容体や性分化に必須のステロイド合成酵素系におよぼす化学物質の影響も明らかにしつつあり、さらに内分泌かく乱物質の作用におよぼす栄養学的影響も検討している。化学物質の作用を中和もしくは軽減する機構、栄養素を明らかにすることは、公衆衛生学的見地からも重要である。

[PDF (1380K)] [引用文献

Copyright(c)2000 科学技術振興事業団