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平成11年度 戦略的基礎研究推進事業 「研究年報」
Vol. 1 (2000) 1211
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「内分泌かく乱物質」平成10年度採択研究代表者
「植物由来および人工の内分泌かく乱物質の相互作用」

香山 不二雄1)
1) 自治医科大学医学部 教授
Abstract:  化学物質の中には、生物の内分泌系をかく乱することにより生殖、内分泌、免疫、神経系に重大な悪影響を与える化学物質があることが明らかとなってきた。哺乳類以外の野生生物では、因果関係は明らかな例がいくつか報告されているが、まだ人では内分泌かく乱化学物質の健康影響は明らかになっていない。内分泌かく乱化学物質の人の健康および生態系へのリスク評価をすることは現時点の急務である。しかし、人工化学物質以外でも生物は自然界に存在するホルモン様物質(植物エスロジェン)を長年摂取してきた。植物エストロジェンは1930年代に発見され、大豆、ナツメヤシなどの食品に多く含まれ、生殖器癌や骨粗鬆症のリスクを下げる効果があるのではないかと利点に焦点を当てて研究がされてきた。生物の進化の過程で植物エストロジェンには適応しており、何らかの生理的な役割を果たしているのかも知れない。しかし、クローバーに多いクメステロールを大量に食べた羊が不妊になった例から、植物エストロジェンも大量に食べれば、哺乳類の生殖機能に障害を与えうることが示されている。米国ではOTC薬品としてイソフラボン50mg/dayの多量な服用が行われており、米国FDAが健康影響に関して検討が行われている。特に日本人は、欧米人に比較して、歴史的に大豆食品摂取量が多く、食品からの内分泌かく乱化学物質摂取の影響評価をするときに大きな修飾因子となり、植物エストロジェンの影響評価および相互作用の研究を不可欠である。以上のような背景から、我々は、大豆食品に多いゲネスティン、ダイゼインおよびクメステロールなどを免疫担当細胞、骨芽細胞、乳癌細胞等の培養細胞に添加して、その反応の差から、作用メカニズムの差の検討を行い、内分泌かく乱物質の影響評価を行う方法論を検討している。

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