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平成11年度 戦略的基礎研究推進事業 「研究年報」
Vol. 1 (2000) 1181
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「地球変動のメカニズム」平成10年度採択研究代表者
「メソ対流系の構造と発生·発達のメカニズムの解明」

吉崎 正憲1)
1) 気象研究所 室長
Abstract:  日本列島にしばしば災害をもたらす顕著な降水現象としては、梅雨前線、冬の日本海上の帯状雲や小低気圧、夏の雷雨、台風などがある。これらはすべて階層構造をしていて、その中でメソ対流系は特に重要な役割を果たしている。メソ対流系とは、水平スケール100kmのオーダーで対流性領域と層状性領域を持つシステムで、自己増殖や組織化によって長時間持続してライン状や塊状などさまざまな形態をとる。「地球変動のメカニズム」において、大気中の水やエネルギーの循環過程は解明すべき問題である。メソ対流系はそうした循環を担う重要なメカニズムの一つであるが、その実態や組織化のメカニズムについて未解明な部分が多く、気候変動のメカニズム解明のためには不可欠な課題である。本研究では、メソ対流系およびその階層構造を解明する事を目的とする。そのために、まず九州地方の梅雨を対象に、野外観測·解析·数値実験を有機的に結合した研究を行う。野外観測としては、機動的な航空機とドップラーレーダー·高層ゾンデ·気象観測船などの地上観測網を組み合わせて、今までにない規模の総合的な観測を行う。また、違う環境で発生するメソ対流系を調べるために、日本海の冬期の帯状雲·小低気圧や関東地方の雷雨についても研究を行う。こうした研究をもとに、日本域のメソ対流系の構造や発生·発達の仕方、およびメソ対流系の形態とその周りの環境場(中間規模擾乱などの場)との関係を明らかにする。本研究によって、大気中の水やエネルギーの循環過程の一つであるメソ対流系がよく理解されるようになる。こうした知見は、(地球規模の大気運動をシミュレートするために必要な)大気大循環モデルにおけるメソ対流系のパラメーター化の改善などに反映される。また、本研究は将来の(衛星を含めた)メソ観測システムや数値モデルによるメソ対流系の予測システムなどの構築につながり、地球変動の一つの形態であるメソスケール擾乱を監視·予測するシステムの発展に寄与する。

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