TOP > 巻一覧 > 目次一覧 > 書誌事項


平成11年度 戦略的基礎研究推進事業 「研究年報」
Vol. 1 (2000) 1174
[PDF (329K)] [引用文献


「地球変動のメカニズム」平成10年度採択研究代表者
「海洋大気エアロゾル組成の変動と影響予測」

植松 光夫1)
1) 東京大学海洋研究所 助教授
Abstract:  大気エアロゾルの直接的·間接的冷却効果は温室効果気体による温暖化効果と相殺する可能性が示唆されている。しかし、その化学組成、濃度、粒子数などの時空間的変動が大きく、地球規模での気候への影響評価の見積りには過大な不確定要素が伴う。大気からの降下物質は、生物活動に影響し、生物起源のエアロゾル発生量や炭素固定量を増減する。地球表面積の約7割を占める海洋において、エアロゾルの主要成分である海塩、鉱物、硫酸塩、硝酸塩、炭素質粒子が対流圏大気組成の決定や気候変化と大きくかかわっている。北太平洋は自然起源と人為起源エアロゾルが混在し、その変質過程が顕著に現れる特徴ある重要な海域である。この北太平洋上での観測が優位に推進できる我が国を中心に地球表層における陸、大気、海洋間を生成、循環、消滅するエアロゾルの物理、化学的特性と生物地球化学的循環の変化を把握することが目的である。現在、日本周辺域の北緯25度から北緯45度までに存在する4つの島に大気エアロゾル観測点を設置する準備を進めている。また陸上観測の不可能な海域においての観測として平成11年度の北太平洋における海洋大気エアロゾルの観測は6回の研究航海、計160日間を越えた。すでに各海域でのエアロゾルの化学組成の特徴や有機エアロゾルの日周変動や海塩粒子と有機エアロゾルが同様の挙動を示しているなど、今までの観測手法ではつかめなかったエアロゾルの振る舞いが明らかにされつつある。無人海洋大気観測艇本体は計画通りに進水した。平成12年度には観測装置を搭載し、浜名湖、遠州灘での航行テストを行う予定である。長期間にわたってエアロゾルの各化学成分濃度の時間変動を伴う地理的分布を明らかにし、モデルによる再現、そして人為起源物質の増大が危惧されている西部北太平洋地域での大気環境変動の将来予測するという目標に近づきつつある。

[PDF (329K)] [引用文献

Copyright(c)2000 科学技術振興事業団