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平成11年度 戦略的基礎研究推進事業 「研究年報」
Vol. 1 (2000) 1137
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「地球変動のメカニズム」平成9年度採択研究代表者
「黒潮変動予測実験」

今脇 資郎1)
1) 九州大学応用力学研究所 教授
Abstract:  最近、人工衛星による海洋観測、現場での黒潮の流量測定、海洋データの同化、海洋数値モデルなどにおいて目覚ましい進展があった。そこで、これらの分野で活躍している第一線の研究者を組織して、これまで夢であった海洋の変動の予測、特に日本南岸での黒潮の流軸位置や流量の変動の予測に挑戦することを計画した。具体的には、まず、黒潮域および北太平洋の亜熱帯循環域を中心にして海洋と気象の変動に関する観測データを収集する。つぎに、その観測データを海洋データ同化モデルによって力学的に整合性のあるデータに編集し、格子点データセットや海面フラックスのデータセットを作成する。これらの編集されたデータを初期値と境界条件として将来の変動を予測できる高分解能の予報モデルを開発する。さらに、これらのデータ同化モデルと予測モデルを統合し、最終的な実用予測モデルを開発する。短期変動については黒潮の流軸位置の予測(1ヶ月先)を目標とする。経年変動については、海面での外力が既知であることを前提として、黒潮の流量を予測(2年先)することを目指す。これまでの研究で以下の点が明らかになった。日本南岸の黒潮の流量の季節変動は、北太平洋上の風応力から期待される変動よりもかなり弱い。その主な原因は、北太平洋を東から西に向かって伝播する季節変動の信号の大部分が、伊豆·小笠原海嶺によって遮られていることにある。黒潮流量の10年程度の時間スケールの変動は、reduced gravityモデルという簡略モデルで、かなりよく再現できる。日本南岸の黒潮流路の短期的な変動については、変分法によって海面高度計データをモデルに同化すれば、2ヶ月程度先の予測ができる。黒潮流路の経年変動については、現実的な外力で駆動した大循環モデルによって、蛇行流路から直進流路への変遷を再現できる。黒潮の上流域に当たる琉球列島の東側に、かなり恒常的な北東向きの流れがあり、この流れが、トカラ海峡を通る黒潮のほかに、日本南岸での黒潮を涵養している可能性がある。

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