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平成11年度 戦略的基礎研究推進事業 「研究年報」
Vol. 1 (2000) 1119
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「環境低負荷型の社会システム」平成9年度採択研究代表者
「途上国に適合する連鎖反応を利用した乾式脱硫プロセスの開発」

定方 正毅
1) 東京大学大学院工学系研究科 教授
Abstract:  年々、深刻化する中国はじめ途上国の酸性雨問題を解決するために、わが国をはじめとする先進諸国がこれまで開発した脱硫技術の途上国への技術移転が試みられているが、高コストと水を大量に使用する湿式プロセスが主流であるため、ほとんど成功していない。途上国に適合する脱硫技術として安価で有価な副生成物を生み、水の消費量の少ない省水型脱硫プロセスの開発が求められている。本研究では、まず上記条件を満足する脱硫プロセスとして連鎖反応を利用した乾式脱硫プロセスの開発を目指す。すなわちこれまで電子ビーム脱硫、脱硝反応(および硫酸イオン溶液中内反応)で示唆されているSO2→SO3の連鎖反応サイクルを抽出してイオン、ラジカルを吹き込むことにより、これを積極的に生ぜしめ排ガス温度160°C ∼110°C の範囲で、SO2の迅速な硫酸化をはかるもので、従来プロセスに比べて
1)脱硫剤および設備が不要のためコストが1/3∼1/5で済む
2)水を使用しない
3)有価副産物が得られる
4)運転が簡単
5)省エネルギー型
などの特徴を有する。さらに、新脱硫プロセスの導入と総合的なエネルギー利用効率向上の施策による環境改善効果の予測モデルを作成することも目的とした。研究の第一段階として、計算機シミュレーションの手法を用いて、気相および液相連鎖反応によるSO2およびNOの酸化の可能性を調べた。その結果、気相中では、H2O2およびOHの添加によりSO2とNOの同時酸化およびCH3OH添加によるNOの酸化が予想された。次に実験的による検討を行いH2O2の添加によりSO2とNOの同時酸化が可能なことを確認した。さらに、CH3OHの添加により、NOが迅速に酸化することを見出した。またNO2存在下でSO2を迅速にCaSO4に転化する新しい脱硫剤New Solventを開発した。次に、液相反応でのSO2の酸化の可能性を理論的、実験的に検討した。その結果、気相反応と同様、H2O2を混入させることにより、液相でのSO2の酸化が迅速に進むことがわかった。さらに、Mnの添加により、溶存酸素によるSO2の酸化が迅速に進行することを見出した。以上の基礎実験結果に基づいて、脱硫のパイロットスケールの実験を行うために中国瀋陽市の化学肥料工場で排ガス処理量2.2万m3/hrのパイロットプラントを建設した。また循環流動層を用いた乾式脱硫プロセスを設計した。さらに脱硫の研究と並行して、新脱硫プロセスの導入と総合的なエネルギー利用効率向上の施策によるSOx削減効果の予測と評価のための統合モデルを構築した。

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