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平成11年度 戦略的基礎研究推進事業 「研究年報」
Vol. 1 (2000) 1043
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「環境低負荷型の社会システム」平成7年度採択研究代表者
「CO2倍増時の生態系のFACE実験とモデリング」

小林 和彦1)
1) 農業環境技術研究所 室長
Abstract:  大気中のCO2濃度は今後も上昇を続け、21世紀半ば頃には現在よりも150-200ppm程度高くなると想定される。本プロジェクトでは、このCO2濃度上昇が、イネの生長·収量と水田生態系にどう影響するかを、FACE(開放系大気CO2増加)実験によって明らかにしようとする。1997年度までに、岩手県雫石町の農家水田にFACE実験施設を建設し、1998年に最初のFACE実験を行った。開発したFACE装置は、独自のデザインにより世界で初めて、100%CO2を空中に直接スプレーするもので、性能解析の結果、FACE装置として実用可能であることが確められた。この装置を使った1998·1999年の実験では、約200ppmの大気CO2増加によりコメ収量が約13-15%増加し、イネの生長における炭素や窒素の分配、葉や茎の養分状態、形態形成、コメの品質等が変化した。このようなイネの生長やコメ収量の変化は、窒素肥料の量によって変化し、肥料が少ないとCO2の影響が小さいことが明らかになった。さらにCO2の増加により、イモチ病の発生や土壌微生物量、水田からのメタンの発生が変化することも示された。2000年も実験を繰り返して、こうしたCO2の影響が毎年の気候等の違いによってどう変動するか調べるとともに、品種の違いや肥料の量によるCO2の効果の変動を調べる。

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