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平成11年度 戦略的基礎研究推進事業 「研究年報」
Vol. 1 (2000) 102
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「生命活動のプログラム」平成8年度採択研究代表者
「変異マウスを用いた発癌制御遺伝子の単離·同定」

野田 哲生1)2)
1) (財)癌研究会癌研究所 部長
2) 東北大学医学部 教授
Abstract:  本研究は、ヒト発癌の新たな予防や治療法の開発を目的として、マウスを用いての遺伝学的手法を駆使することにより、その発癌過程を正に負に制御している遺伝子群の単離·同定を行い、発癌の分子機構の解明を目指すものである。具体的には、大腸ポリープを始めとするヒトの各種発癌の原因と考えられているAPC遺伝子変異に焦点を当て、マウスを用いてのフォワード·ジェネティクス及びリバース·ジェネティクスという分子遺伝学的手法による解析を大きな2つの柱として、研究を推進している。フォワード·ジェネティクスのグループは、ヒト発癌モデルマウスであるAPC変異マウスを用い、これと野生マウス由来の近交系マウスとの交配実験により、昨年までに消化管腫瘍の発生を大きく抑制する機能を有する遺伝子座を数カ所同定しており、本年度はその遺伝子の単離·同定を目指して、コンジェニックマウスの作成を行った。又、我々は昨年度までにAPC変異マウスの発癌を抑制する新たな変異マウスを樹立しており、本年度はこの原因遺伝子の候補となる遺伝子の単離·同定を行った。こうした遺伝子は、大腸ポリープを始めとするAPC変異に起因する発癌過程を制御する機能を有すると考えられ、新たな発癌予防や癌治療の道が拓かれると期待される。一方リバース·ジェネティクスの手法では、発癌機構の解明を目的として、APC遺伝子の不活化が生体内で上皮細胞を癌化させる分子機構を詳細に解析している。この解析のため、本年度は各種組織特異的にCre組換え酵素を発現するトランスジェニックマウスを樹立し、これを用いてのコンディショナル·ターゲティング法による解析を行った。これを用いることにより、消化管上皮を始めとするマウス生体内の各種細胞で、APC遺伝子の不活化により生じる変化を詳細に解析することが可能となり、発癌の分子機構の解明を目指している。

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