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終了報告書「科学技術振興事業団国際共同研究セラミックス超塑性プロジェクト」
Vol. 1 (2000) p.118
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ボロン·カーボン添加ナノ結晶炭化ケイ素の超塑性
—粒界ボロンの役割—

篠田 豊1)
1) JST
  微細結晶粒組織を有する材料を高温でゆっくりと引っ張ったときに異常に伸びる現象を超塑性という。超塑性の原子レベルのメカニズムについては未だ不明な点が多いが、大変形後の結晶粒が等軸形状を保っていることなどから変形が隣接する結晶粒のすべりによって支配的に起こっているということ、そして、超塑性を示す材料の結晶粒組織は極めて微細であることが知られている。そのため、超塑性材料を得るために、微細結晶粒組織を有する材料を作製し、さらに変形中の粒成長による結晶粒の粗大化を抑制することに力が注がれ、初期の超塑性研究の中心は、結晶粒が微細で粒成長の起こりにくい2相混合組織の共晶合金や共析合金であった。その後、結晶粒微細化技術の向上並びに金属の合金化によって多種多様な超塑性金属材料が開発されることになった。さらに、超塑性研究の領域は金属間化合物やより強固な結合をもつイオン結合性セラミックス、そして共有結合性セラミックスへと広がっていった。窒化ケイ素(Si3N4)のような共有結合性材料は、焼結が非常に難しいため焼結助剤として金属や、金属酸化物が多量に添加される。そのため、焼結体の粒界には粒界相と呼ばれる厚さ1∼2nmのガラス相が存在する。このようなガラス相は高温変形時には粘性流体として振る舞い粒界すべりを容易にする。また、粒界ガラス相を介した溶解-析出による物質移動が、粒界すべりによって生じた隙間を埋めるための調節機構として働く。このように、これまでの共有結合性セラミックスの超塑性には粒界ガラス相の助けが必要とされた。共有結合性セラミックスにおいて、粒界にこのようなガラス相が存在しない場合でも超塑性変形が可能か否かを明らかにするために、我々は窒化ケイ素よりも共有結合性の強い炭化ケイ素において、粒界ガラス相の存在しないナノ結晶材料を作製し、高温引張試験を行い超塑性発現の有無を調べた

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