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「動植物細胞におけるストレス応答機構」に関する共同研究
Vol. 1 (2000) 755
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植物DNAの自動分離システムの開発
向井 忠昭1), 北廣 恒司1), 柳瀬 浩1), 庭田 悟1), 山本 良平1), 菊池 尚志2), 渡邉 正己3)
1) 倉敷紡績株式会社·技術研究所
2) 農林水産省農業生物資源研究所
3) 長崎大学薬学部
Abstract:  近年、遺伝子(DNA、RNA)の分離、分析は特殊な技術ではなくごく一般的な実験手法となってきた。しかしながら、これらの操作はルーチンワーク化しており誰でもできる反面、煩雑な操作と多大な時間を必要とする。当然、これらの自動化による研究の効率化が望まれている。同時に、自動化は各操作の標準化にも寄与する。我々は、従来より、遺伝子の自動分離システムの開発を行ってきた。その結果、主として微生物の遺伝子を全自動で分離できるプラスミド自動分離装置PI-100および本装置に適用できる分離用試薬キットを開発し、現在日本国内だけでなく海外でも使用されている。更に、これに次いで、血液DNA、細胞DNAなど動物由来の遺伝子を自動分離できる核酸分離装置NA-1000と試薬を開発した。この装置ではRNAの分離も可能となった。上記のように、DNAおよびRNAの自動分離が可能となってきたが、植物由来の遺伝子については未だ自動分離システムは開発されておらず、植物を対象としている分子生物学者からは自動化が強く望まれている。そこで、植物DNAの自動分離システムの開発に着手した。
植物のDNAを分離するに際しては、動物細胞より強固な構造を持つ組織、細胞を効率よく破砕する必要がある。しかし、自動化を考えた場合、破砕法として液体窒素などを使用する従来法は自動化が難しく、新しい方法の開発が必要である。これについては別途開発を行うこととし、本研究では組織破砕以降の操作を自動化することを第一目標とした。装置としては既存のプラスミド自動分離装置PI-100または核酸分離装置NA-1000の機構を組み合わせることにした。
検討の結果、植物DNAの分離に広く用いられているCTAB法を改良し、試薬分注、撹絆、遠心分離、デカンテーションの装置ブロックを組み合わせることにより自動分離が可能であることが分かった。この方法でイネからDNAを抽出することができた。ただし、従来より行われているCTAB法に比べ、得られるDNAの純度が低いという結果になった。しかし、自動化の基本設計は完成したものと判断される。今後は、純度向上のための改良および得られるDNAがPCR等の分析に使用可能かどうかを検討する予定である。

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