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「動植物細胞におけるストレス応答機構」に関する共同研究
Vol. 1 (2000) 642
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ウミガメ類の甲羅成分の比較と細胞ストレス応答の研究
川端 善一郎1)2), 晦日 房和1)2), 金 梵奎1)2), 藤山 美幸1)2)
1) (社)長崎県食品衛生協会·食検
2) 長崎県工業技術センター
Abstract:  タイマイ、アカウミガメ、及びアオウミガメの甲羅を構成するタンパク質をアミノ酸組成、並びに、電気泳動において調べた。その結果、アミノ酸組成分析では、3種類の組成比に大きな差はなく類似しており、グリシン30%、プロリン10%、チロシン10%と3種類のアミノ酸で約50%を占めることが明らかとなった。さらに、抽出したタンパク質をSDS-PAGEに供したところ、いずれも15kDa ∼ 30kDa付近にバンドが検出された。ウミガメの種類により含まれるタンパク質の分子量及び含有量に差が認められ、このことが甲羅の性質の違いに起因している可能性が示唆された。
3種のウミガメの細胞レベルにおける熱ストレス応答を調べるために、線維芽細胞の分離を試みた。真皮組織から分離した細胞の増殖はいずれも、19°C∼33°Cの間で温度依存的に認められ、33°Cにおいて最も速いことがわかった。さらに、37°C以上で培養すると9日目で生存率が1%以下になることが明らかになった。以上より、ウミガメの細胞はほ乳類のものと至適温度が異なり、このことは自然界の多様な温度変化に対応できる変温動物の特徴であると考えられる。一方、生育環境による形態変化も認められた。通常の組織培養用 dish を用いるとコラーゲンコートのものと異なり、タイマイの細胞では比較的細胞間接着が見られ、他の2種においては低温の場合のみ同様の現象が観察された。このことから、ある種のウミガメでは低温によるストレスが細胞間接着の促進に影響している可能性が考えられた。一般に、細胞は熱ストレスによりHspを産生することが知られている。3種類のウミガメ線維芽細胞のいずれも、Hsp70は構成的かつ温度依存的に、一方、Hsp90は致死的なダメージを与える41°Cで顕著に増加することが明らかになった。

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