| | | | Abstract: 細胞レベルにおけるウミガメの甲羅形成メカニズムを解明することを目的とし、まず、ウミガメ類の甲羅を含む組織を調べた。その結果、アオウミガメ、アカウミガメ及びタイマイに共通して甲羅のすぐ下に目的の表皮角化細胞が存在することが判明した。そこで、Dispase処理により真皮から、甲羅を含む表皮組織を剥がし表皮角化細胞を分離した。次に、様々な培地を用いて細胞の増殖及び角化能力を検討した。その結果、アオウミガメ表皮角化細胞をDMEM/10%FBSで培養すると、細胞は集まって楕円状に増殖し、その中央付近に茶色の組織状の塊が形成された。その組織状の塊はトリパンブルーで染色され、さらに、5-ブロムデオキシウリジン(BrdU)の取り込みも低いことから、細胞でなく角化組織の可能性が示唆された。そこで、その組織を免疫染色で調べたところ、抗体(抗タイマイ甲羅15kDaタンパク質血清)と反応することから角化して形成されたことが明らかとなった。この細胞増殖はDMEM/10%FBSでは温度依存的に1カ月以上続いた。一方、アカウミガメ表皮角化細胞でもDMEM/10%FBSで培養すると角化が起こり、Feeder layerを用いると角化が促進された。このような細胞増殖と角化組織形成は、培養条件やウミガメの種類により多少の差異が認められた。これらの結果から、in vitroにおいてウミガメ表皮角化細胞が増殖に続き角化が起こっていく過程が明らかになってきた。 | | | |