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「動植物細胞におけるストレス応答機構」に関する共同研究
Vol. 1 (2000) 394
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ストレスに対する生体応答の機構
-発がんの原因となる高分子有機ラジカル

渡邉 正己1), 小山 真治1), 児玉 靖司1), 鈴木 啓司1), 宮崎 哲郎2), 松本 拓郎2)
1) 長崎大学薬学部放射線生命科学教室
2) 名古屋大学工学部
Abstract:  放射線の遺伝的影響は、放射分解で生じたラジカルによるDNA損傷が直接の原因であると考えられている。加えて、生体の80%以上は水であるため、放射線の生物影響の主因となるラジカルは、水の放射分解によって生ずるOHあるいはHラジカルであると推測されている。しかし、こうした推測は、放射線によって生じたラジカルを直接測定した結果をもとになされたものではなく、ラジカルエネルギーを化学物質で捕捉させ、その結果起こった化学反応の反応常数をもとにされたものであり、生体内における実際の姿を反映しているかは疑問である。そこで、我々は、放射線照射された細胞内で実際に起きているラジカル反応を直接捕え、突然変異や発がんなど生物学的影響の原因となるラジカルを特定する目的で、細胞内ラジカルを電子スピン共鳴法(ESR法)を用いて測定することを試み、その測定に成功した。その結果、放射線による遺伝的影響の主因となるラジカルは、従来考えられていた様にOHあるいはHラジカルに代表される反応性の高いラジカルではなく、常温で半減期が20時間を越える安定した高分子有機ラジカルであることを世界で始めて発見した。さらに、この長寿命ラジカルは、ビタミンCや没食子酸など植物の産生するストレス軽減物質の処理で効率良く捕捉され、これらの摂取によって生活習慣病の予防が可能である可能性を指摘した。

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