| | 松田 尚樹1), 柳瀬 浩2), 安藤 秀哉3), 堀川 美和4), 王 立紅4), 渡邉 正己4) |
| 1) 長崎大学アイソトープ総合センター 2) 倉敷紡績·技術研究所 3) サンスター·中央研究所 4) 長崎大学薬学部·放射線生命科学 |
| Abstract: 皮膚の黒化(sun tannning)は、細胞の生理的かつ即時的なUV応答の一つである。これは表皮のメラノサイト(melanocyte)によるメラニン産生の促進によるもので、UVmelanogenesisと呼ばれているが、その分子機構には不明な点がい。本研究では、ヒト皮膚由来正常メラノサイトに生理的波長域であるUV-Aを照射し、メラニン産生などの細胞機能の変化、およびそれに関わるシグナル伝達分子について、MAPキナーゼ(MAPKs)に着目して検討した。メラノサイトにUV-A(365nm;1000kJ/m2)を照射すると、照射4時間後にメラニン生合成に必須の酵素であるtyrosinaseのmRNA発現が増加し始め、照射2日後には細胞より抽出したメラニン量も増加し、melanizationが起こっていることが示された。細胞数には変化が認められなかった。またMAPKsの中では、UVA照射15分後にはERK1/2が活性化された。このUVA照射によるERK1/2活性化は、抗酸化剤であるNacetyl-L-cysteine(NAC)、あるいは受容体型チロシンキナーゼ阻害剤であるsuramineが存在することにより抑制された。以上の結果より、UVAはメラノサイトによるメラニン合成(UV-melanogenesis)を促進し、そのシグナル伝達機構に、UVAにより産生する活性酸素種、および細胞膜の受容体型チロシンキナーゼを介したERK経路の活性化が関与していることが示唆された。 | | | |