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「動植物細胞におけるストレス応答機構」に関する共同研究
Vol. 1 (2000) 359
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ヒト歯根膜細胞の増殖分化のEGF、低酸素、メカニカルストレスに対する応答性と、それに伴うMAPKの選択的活性化
松田 尚樹1), 森田 直子2), 松田 和子3), 渡邉 正己4)
1) 長崎大学アイソトープ総合センター
2) 長崎大学医学部·原研放射
3) 科学技術振興事業団·長崎研究室
4) 長崎大学薬学部·放射線生命科学
Abstract:  環境ストレスは、それに応答する種々の細胞内MAPK(mitogen activated proteinkinase)の活性化を介して細胞の機能に変化を及ぼすものと考えられるが、その経路の特異性については知られていない。そこで本研究では、骨芽細胞様性質を有するヒト歯根膜細胞にメカニカルストレス、増殖因子EGF(epidermal growth factor)刺激、あるいは低酸素ストレスを与え、細胞の増殖性、骨性分化、および3種のMAPK、すなわちextracellular-related kinase(ERK)1/2、c-Jun N-terminal kinase/stress activated protein kinase(JNK)、p38の活性化を調べた。細胞増殖はEGF 10ng/ml刺激あるいは低酸素ストレス(5% O2-41.5mmHg)により促進され、機械的伸張ストレス(9% strain-6cycles/min)により抑制された。その逆に、細胞の骨性分化を示すALP活性は機械的伸張ストレスにより上昇し、EGFと低酸素ストレスにより低下した。またEGFと低酸素ストレスはERK1/2を一過的に活性化させ、一方メカニカルストレスはJNK/SAPKを持続的に活性化させた。p38にはこのような変化は見られなかった。以上の結果より、本細胞の増殖と骨性分化にはそれぞれERK1/2およびJNK/SAPKが選択的に関与しており、この両者の活性化経路のバランスが細胞の応答性を決定している可能性が示唆された。

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