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「動植物細胞におけるストレス応答機構」に関する共同研究
Vol. 1 (2000) 342
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メカニカルストレスにより分化誘導されたヒト歯根膜細胞におけるEGFおよびEGF-Rの役割
松田 尚樹1), 横山 兼久2), 竹下 哲史3), 渡邉 正己4)
1) 長崎大学アイソトープ総合センター
2) 科学技術振興事業団·長崎研究室
3) 長崎大学医学部·原研放射
4) 長崎大学薬学部·放射線生命科学
Abstract:  歯牙と歯槽骨の中間に位置する歯根膜は、常に咬合圧によるメカニカルストレスを受けている軟組織である。歯根膜の細胞は骨芽細胞とセメント芽細胞に分化することのできる多能性細胞と考えられており、その分化制御には上皮増殖因子(EGF、epidermal growthfactor)およびその受容体(EGF-R)が関与していることが知られているが、この細胞のメカニカルストレスに対する応答性については明らかでない。本研究では、培養歯根膜細胞にin vitroで機械的伸張ストレスを加え、細胞の増殖、分化、およびEGFとEGF-Rの役割について検討した。
Flexercell cell-strain unitを用いてヒト歯根膜細胞に伸張率9%および18%、6回/分の伸張反復ストレス(cyclic stretch)を加えたところ、ストレス負荷4日以降において、骨性分化のマーカーであるアルカリ性フォスファターゼ(ALP)活性、およびオステオカルシン(OCN)mRNA発現が上昇した。その逆に、細胞増殖性は抑制された。これらのメカニカルストレスの作用は、EGF(10ng/ml)存在下で完全に消失した。その一方、メカニカルストレスによりEGF-Rタンパク量は減少した。また、EGFと結合後のEGF-Rの自己リン酸化タンパクは、メカニカルストレスによりむしろ増加した。
以上の結果より、メカニカルストレスは歯根膜細胞の分化を誘導すること、さらに、メカニカルストレスとEGF/EGF-Rの相互作用が、骨芽細胞とセメント芽細胞の供給源としての歯根膜細胞を制御している可能性が示唆された。

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