TOP > 巻一覧 > 目次一覧 > 書誌事項


「動植物細胞におけるストレス応答機構」に関する共同研究
Vol. 1 (2000) 224
[PDF (690K)] [引用文献


放射線ストレス誘発遺伝子の機能解析
児玉 靖司1), 鈴木 啓司1), 渡邉 正己1)
1) 長崎大学薬学部保健衛生薬学講座放射線生命科学教室
Abstract:  Gadd45は、Gadd遺伝子群のうちで唯一電離放射線によっても発現誘導がみられる遺伝子である。放射線高感受性遺伝病として知られるataxia telangiectasia(AT)細胞では、放射線照射後のGadd45遺伝子の誘導に異常がみられることから、本研究ではGadd45遺伝子の発現異常とAT細胞の表現形質との関連性を調べた。ヒトGadd45遺伝子のcDNAを単離し、誘導型発現ベクターに、センス及びアンチセンス方向に組み込んだ。このうちセンスGadd45遺伝子を、AT5BIVA細胞に導入して、発現誘導剤であるisopropylthiogalactoside(IPTG)により、導入したGadd45遺伝子の発現誘導が可能なAT細胞を樹立した。まず、GADD45を過剰発現させたAT細胞にX線を照射し、放射線感受性への影響を調べた。その結果、GADD45の過剰発現は、AT細胞の放射線感受性には全く影響を与えないことが分った。次にGADD45過剰発現の細胞増殖能への影響をコロニー形成法により調べた。その結果、GADD45過剰発現により、コロニー形成率が約50%抑えられることが分かった。このGADD45によるコロニー形成抑制能は、細胞播種後24時間に限局した過剰発現でも効果がみられた。しかし、細胞集団で調べると、GADD45過剰発現による細胞増殖抑制、細胞周期の停止、およびアポトーシスは観察されなかった。本研究の結果は、孤立的環境にある細胞が足場依存的増殖を始める初期段階において、GADD45が増殖抑制的に作用することを示唆している。

[PDF (690K)] [引用文献

Copyright(c)2000 科学技術振興事業団