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「動植物細胞におけるストレス応答機構」に関する共同研究
Vol. 1 (2000) 212
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アントシアニンはストレスを防ぐ?
ハマボウフウのアントシアニン生産細胞と非生産細胞でのストレス応答の違い

北村 美江1), 太田 美奈1), 池永 敏彦1), 渡邉 正己2)
1) 長崎大学薬学部 医薬品資源学薬用植物園
2) 長崎大学薬学部 保健衛生薬学放射線生命科学教室
Abstract:  ハマボウフウの葉柄由来のカルスから確立したアントシアニン高生産細胞(紫色細胞)と非生産細胞(白色細胞)を用いて、ストレスに対する応答の違いを調べた。ストレス誘導物質として酵母エキス(YE)及びフリーラジカルを生成すると言われるH2O2、AAPH及びX線を用い、これらの細胞生長、アントシアニン含量及びストレス化合物であるフラノクマリンの誘導に及ぼす効果を紫白両色細胞を用いて比較した。
紫白両色細胞ともYE処理及びX線照射では細胞生長に影響を与えなかったのに対し、H2O2とAAPH処理では生長を阻害した。また、紫色細胞ではH2O2とAAPHを用いた場合にのみアントシアニン含量の低下がみられた。ストレス化合物であるフラノクマリンの誘導は、YE、H2O2、及びX線処理の時に白色細胞でのみ検出され、紫色細胞では全くフラノクマリンの誘導は認められなかった。以上の結果、無機ラジカルがストレス化合物の誘導に重要な役割を果たすこと、アントシアニン生産細胞でストレス化合物の誘導がおこらなかったのは、アントシアニンがラジカルスカベンジャーとして働き、その結果としてストレスに対する応答が起こらなかった可能性が考えられる。

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