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「動植物細胞におけるストレス応答機構」に関する共同研究
Vol. 1 (2000) 116
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高等植物は外からの刺激を如何に認識し、情報を伝達し、応答するか。
菊池 尚志1), 柴田 百合子1), 永田 俊文2)
1) 農林水産省農業生物資源研究所分子遺伝部遺伝子発現研究室
2) 科学技術振興事業団長崎研究室
Abstract:  高等植物の環境ストレス応答機構を分子レベルで、解明するためにシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)を材料とし、外的ストレスとしてγ線、UV照射の実験系を構築し、照射に伴う種々の応答反応を生理学的に解析した。この結果、アントシアニンの蓄積(1)、活性酸素消去能の蓄積(1)、成葉での毛状突起(trichome)の増加(2)、エチレンの発生(1)、根の表皮、皮層細胞の膨潤(1)、根毛の伸長(1)、根の伸長性の異常(屈曲)(3)(1:γ線、UV共に誘導される反応、2:γ線のみで誘導される反応、3:UVのみで誘導される反応)を見いだした。アンチオキシダントを用いた実験、あるいは活性酸素発生剤を用いた実験から、これらの反応がγ線·UV照射時に細胞内で発生する活性酸素を介した反応であることを確認した。さらに細胞内シグナル伝達系に関して解析を行った結果、照射に伴ってプロテインキナーゼとしての反応性を持つNDPK(Nucleoside Diphosphate Kinase)活性が細胞質画分から膜画分に移行することを見いだした。酵母ツーハイブリッドシステムを用いてNDPKと相互作用する遺伝子群もいくつか見いだしている。以上のことから、高等植物は活性酸素をシグナル伝達因子として利用するストレス応答系を保持し、生体内で活性酸素レベルが異常に上昇した際に、そのダメージから自己防衛するための応答系を誘導する際に用いていることが明らかとなった。

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