TOP > 巻一覧 > 目次一覧 > 書誌事項


共同研究終了報告書「脳活動に伴う二次信号の計測とその発生機序に関する研究」
Vol. 1 (2000) p.683
[PDF (98K)] [引用文献


【2】痴呆症例の経時変化に関する検討および剖検診断所見との比較検討
株式会社ニッショー大館工場
  高齢化社会の中で痴呆をいかに対処するかは、大きな社会問題になっている。痴呆をきたす神経疾患は多数知られているが、先天性あるいは代謝異常など、遺伝性疾患を除くと、大多数はアルツハイマー型痴呆(AD)および脳血管性痴呆(VD)に含まれる。VDについては、基本的に脳血管障害が存在し、複数あるいは広汎な障害に基づくことから脳血管障害の対策が大きな比重を占めている。これについては神経症候学並びに画像による形態的、機能的変化の追跡が発達し、大きな成果をあげている。これに対し、ADについては、病理学的に老人斑および神経原繊維変化の出現と神経細胞の減少という変化の特徴は見られるものの、臨床的な高次精神活動を客観的に評価する手段がないために、AD本来の病態に変化をきたしているか、特殊な機能を一過性に賦活している結果であるか等、治療効果および予後に対する検討方法の開発は重要な意味を持っている。老人斑および神経原繊維変化に共通してみられる変化の1つに燐酸化タウ蛋白の増加があげられる。この燐酸化タウ蛋白が脳脊髄液(CFS)にも出現することを手掛かりに、CFS中のタウ蛋白を定量的に測定することにより、ADの病態を把握できる可能性がある。本研究では、AD症例、VDおよびその他の疾患での症例について、CFS中のタウ蛋白濃度を測定した。また遺伝子工学の発達ともに、遺伝子の解析から疾患をみるアプローチが注目されてきている。RosesらはApoE遺伝子ε2 /ε3 /ε4 の3種のアレルのうち、ADではε4の頻度が異常に高い事実を報告した。これはまず家族性遅発性ADで報告され、次いで弧発性遅発性ADにも当てはまることが相次いで報告された。ApoE遺伝子とADとの関連は病理形態学的、遺伝的、生化学的にも示されており、ApoE遺伝子とりわけε4は、遅発性ADの単なるマーカーではなく疾患の病態発現そのものに関係していると考えられる。本研究では、AD症例、VDおよびその他の疾患での症例について、ApoE遺伝子とAD発症の危険率をみるとともにAD発症年齢との関係について検討した。

[PDF (98K)] [引用文献

Copyright(c)2000 科学技術振興事業団