| 痴呆性神経疾患鑑別の為の微量蛋白測定技術の開発研究 研究報告書
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| | 本研究は、主題である「脳活動に伴う二次信号の計測とその発生機序に関する研究」に関連する事業として、遺伝子および微量蛋白を用いた研究がどのように貢献できるかについて検討を加えることを目的とした。主にアルツハイマー型痴呆(AD)を例にとり、以下の3項目について診断·治療経過および予後を測定する際の問題点を明らかにし、その有用性について検討した。 【1】PCR改良法開発に関する検討 熱伝導性を高め、遺伝子増幅(PCR)の時間短縮の可能性について検討した。アルミ容器による直熱方式では時間短縮ができたが、遺伝子が増幅されないことが判明した。また、アルミ容器の表面をテフロンコーティングし、遺伝子の増幅を試みたが、こちらでも遺伝子の増幅は検出できなかった。そこで、PCR時の温度設定、容器素材について検討し、直接方式での遺伝子増幅の際の温度変化を通常のマイクロチューブ使用時の温度変化と同じに調製したが、遺伝子の増幅は検出できなかった。次にマイクロチューブと同じ素材でシート状の容器を作製しPCRを行ったところ、遺伝子増幅を検出できた。 【2】痴呆症例の経時変化に関する検討 AD症例では脳脊髄液中のタウ蛋白が有意に高値であり、ADの鑑別のためのマーカーとして有用でることが示唆された。またAD症例ではApoE遺伝子型のε4が高頻度に認められ、ε4を持つ人ではAD発祥年齢が早かった。ADの危険因子としての役割が示唆された。しかし、剖検症例ではタウ蛋白がA以外の症例においても異常に高値を示しており、これについては今後の課題となった。 【3】痴呆症例の剖検所見の検討 →アルツハイマー型老年痴呆例のアポトーシスについて 当初の計画では、脳脊髄液中のタウ蛋白濃度が剖検例での組織学的変化とどのように対応するかを検討する予定であったが、臨床例と異なり剖検例においては、タウ蛋白に各種の非特異的な要素が加わり、特に頭蓋内に出血を伴う例では異常高値を示す可能性があることが判明し、今後更に検討を要することが明らかになった。そこで、今回は典型的なアルツハイマー型痴呆例における神経細胞の変性消失を形態学的、生化学的に示されるアポトーシスによる細胞死を検討した。この結果、従来から示されているprogrammed cell deathの要素を残しながら、非典型的アポトーシスが示唆された。 以上から、微量蛋白および遺伝子の測定に関する研究から痴呆をきたす疾患の鑑別が可能となった。こうした研究は、主題である「脳活動に伴う二次信号の計測とその発生機序に関する研究」の研究促進の一助として有用であることが示された。 | | | |