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共同研究終了報告書「脳活動に伴う二次信号の計測とその発生機序に関する研究」
Vol. 1 (2000) p.406
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成熟脳組織の試験管内における代謝活動維持に関する基礎的条件の研究
山田 勝也1), 山本 亘彦2), 外山 敬介2), 小川 哲朗1)
1) 秋田大学医学部生理学第一講座
2) 京都府立医科大学第二生理学講座
  試験管内でスライス状の大脳皮質視覚野と視覚系の中継核である視床外側膝状体、または他の視覚野とを共培養した。皮質各層において細胞の電気生理学的膜特性ならびに神経伝達の試験管内での発達について調べたところ、膜特性は正常皮質における生後発達と類似した成長を示した。特に受動的な膜特性の変化の大きさは浅層の方が深層より大きく、また深層の方が成熟の時間経過が先行して進んでいることが示唆された。また、層によって膜特性に違いがみられ、これは層特異的な発達のメカニズムが培養下でも作用することが示唆された。一方、神経伝達も正常に類似した発達を示したが、特に興奮性伝達における各受容体の寄与が培養日数の経過により層特異的にしかも正常に変化したことは、脳における神経伝達の発達において少なくとも興奮性アミノ酸受容体の発現にはパターン化された感覚入力が必要ないことを示唆している。また以上の結果により、幼弱期に取り出した脳組織は通常の中枢神経系の培養条件下で少なくとも神経細胞に関してはかなりの機能的成熟が可能であり、またその活動を数ヶ月以上の長期にわたり維持できることが明らかとなった。幼弱期の組織と異なり、完全に成熟した組織を試験管内に取り出す場合には、通常の培養条件下ではその維持は困難であった。しかし、組織の代謝環境を整えることで長期にわたり維持できる可能性が示唆された。

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