TOP > 巻一覧 > 目次一覧 > 書誌事項


「さきがけ研究21」研究報告会「形とはたらき」
Vol. 1 (2000) p.57
[Image PDF (357K)] [引用文献


骨形成過程に関わる遺伝子群の解明
小守 壽文1)
1) 「形とはたらき」領域
  骨格を形成する骨·軟骨は一見単純な構造物のように見えますが、それがどのような遺伝子によってどのように形成されるかは意外によくわかっていません。骨は骨芽細胞によって直接形成されるもの(膜性骨化と言い頭蓋骨等に起こる)と軟骨を経て骨に置き変わるもの(内軟骨性骨化と言い四肢骨、肋骨等に起こる)があります。軟骨はもちろん軟骨細胞によって形成され、軟骨細胞が成熟した後(肥大軟骨細胞)、血管が軟骨基質を溶解する破骨細胞とともに侵入し、そこにできた空間(骨髄)に造血が始まるとともに、軟骨周囲より侵入した骨芽細胞が骨を形成し、軟骨が骨に置き変わっていくわけです。しかし、軟骨細胞にも2種類あって、関節軟骨や椎間板を構成する軟骨細胞は永久軟骨細胞と言って成熟もせず、骨にも置き変わらない軟骨細胞です。私は、白血病に関連する転写因子のノックアウトマウスを作製する過程で、Cbfa1(core binding factor α1)が骨芽細胞分化に関わるマスター遺伝子であることを偶然発見しました(図1)。この遺伝子を破壊したマウスは骨芽細胞を完全に欠損し、全く骨ができません。骨形成過程の第一歩が明かとなったわけでありますが、最終的に骨が形成されるには、多くの遺伝子が上記の細胞の分化およびそれらの細胞間相互作用に関わっていると考えられます。本研究では、Cbfa1の機能を明確にするとともに、Cbfa1が転写調節する遺伝子群を明らかにすることにより、骨形成過程を分子レベルで解きほぐしていくことを目指しました。

[Image PDF (357K)] [引用文献

Copyright(c)2000 科学技術振興事業団