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「さきがけ研究21」研究報告会「形とはたらき」
Vol. 1 (2000) p.15
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軟体動物の特異な遺伝現象に関する基礎的研究—巻き貝のミトコンドリアDNAゲノム構造の多様性
上島 励1)
1) 「形とはたらき」領域
  後生動物のミトコンドリアDNA(mtDNA)は約16kbpの環状分子で、ゲノム上には2つのrRNA、13の蛋白遺伝子、22のtRNA遺伝子の合計37種類の遺伝子をコードしています(図1)。mtDNAのゲノム構造は一般に保存性が高く、ゲノム上の遺伝子配置はほとんど変化しないことが知られています。脊椎動物を例にとると、魚類から哺乳類のヒトに至るまでmtDNAの主な遺伝子は同じ順番に並んでいます。また、脊椎動物と節足動物のように異なる動物門ですら、主要な遺伝子配置は同じであるため、mtDNAのゲノム構造は動物門を越えて保存されていると考えられてきました。ところが、近年になって、軟体動物の腹足類(巻き貝類)は例外で、mtDNAの遺伝子配置が著しく多様に変化していることが私達の研究から分かってきました。アワビとカタツムリはいずれも腹足類ですが、mtDNAの遺伝子配置は全く異なっており、共通点はほとんどありません。動物門を越えて保存されている遺伝子配置が、同じ綱に属するような近縁な分類群の間でこれほど大きく変化しているというのは実に驚くべきことです。このようにゲノム構造が多様性に富む腹足類は遺伝子配置の変化速度が速くなっていると考えられ、ゲノム構造の進化を研究する絶好のモデルと言えます。本研究では、腹足類の特異なmtDNAに注目し、ゲノム構造がどのようにして多様に進化していったのか、また、遺伝子配置の変化にはどのようなメカニズムが関与しているのかを探ることを目指しました。

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