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御子柴細胞制御プロジェクトシンポジウム講演要旨集
Vol. 1 (2000) p.61
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ラット海馬CA1神経細胞の長期抑圧現象におけるカルシニューリンの役割
李 勝天
  カルシニューリン(CaN)は中枢神経系においてCa2+/calmodulinにより活性化される唯一の脱リン酸化酵素であり、神経系のシナプス可塑性に関与していると考えられている。今回の実験はCaNが海馬CA1神経細胞の長期抑圧現象(LTD)の形成において果たす役割について調べた。1973年BlissとLomoにより脳の皮質でのシナプス伝達効率の長期増強現象(LTP)が報告されて以来、LTPやその逆に伝達効率の下がる長期抑圧現象(LTD)などのシナプス可塑性は記憶や学習といった脳の高次機能における細胞レベルでの基礎過程と考えられてきた。海馬CA1ニューロンにおいてはN-methyl-D-aspartate型グルタミン酸レセプター(NMDAR)と代謝型グルタミン酸レセプター(mGluR)のそれぞれの活性に依存する二種類のLTD(NMDAR-LTDとmGluR-LTD)が報告されている。1994年、NMDAR-LTDの形成においてCaN活性が必要であることが報告されて以来、CaNはCa2+シグナリングの一環として、LTDの形成に重要な蛋白分子であると考えられてきた。私はmGluR-LTDにおいてもNMDAR-LTDと同様に細胞内へのCa2+流入が必要であることから、mGluR-LTDの形成においてもCaNの活性が関与しているのではないかという仮説を立て、集合電位記録法とwhole cell記録法などの電気生理学的手法を用いて、ラット海馬CA1錐体細胞のmGluR-LTDにおけるCaNの役割について検討した。

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