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御子柴細胞制御プロジェクトシンポジウム講演要旨集
Vol. 1 (2000) p.47
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中枢神経系におけるコンディショナル遺伝子ノックアウト
鈴木 昇, 二木 啓
  コンディショナル遺伝子ノックアウトは、遺伝子改変動物(ミュータント動物)の特定の臓器·細胞型においてのみ研究対象の遺伝子機能を欠損させる技法である(図1B)。近年、その必要性·重要性がますます高まっている。なぜ、コンディショナル遺伝子ノックアウトが必要なのか。従来の遺伝子ノックアウトでは、ミュータント動物の初期発生時期から成体にいたるまで、からだを構成するすべての細胞で対象遺伝子の機能が欠損する。そのため、つぎのような場合、中枢神経系における対象遺伝子の機能解析が困難または不可能となるからである。第一例として、対象遺伝子産物が、成体の中枢神経系における機能以外に、胎生期の動物の正常発育に重要な機能を持つ場合である。従来法では、遺伝子ノックアウトによって母体内で重篤な奇形や胚性致死が誘発されるため、成体における機能解析が困難であるか、ミュータント動物を得ることすらできない。第二例として、対象遺伝子産物が、動物成体において、中枢神経系における機能以外に他の臓器で重要な機能を担っている場合である。従来法では、ミュータント動物の表現型(症状)は複数臓器の異常の複合結果となってしまうため、直接の原因臓器を特定することが困難である。第三例として、対象遺伝子産物が中枢神経系特異的ではあっても、複数種の細胞型で発現·機能している場合である。従来法では、症状を特定のタイプの細胞の機能異常に帰着することは容易ではない。われわれは、中枢神経系に限定してカルシウム動態を制御する遺伝子群の生理機能を解析するため、以上の従来の遺伝子ノックアウトの短所を解決する糸口を求めコンディショナル遺伝子ノックアウトの系の確立を指向してきた。

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